妊婦と赤ちゃんに学んだ冷え症の科学
―冷え性は「万病の元」―


★本当に怖い妊婦の冷え症

女性の社会進出とともに、日本では便秘、頭痛、肩こり、足のむくみ、冷え症などの不快な症状、そして不妊に悩む女性が増えています。これらの症状は単独ではなく、通常は複数の症状と「冷え性」とはリンク しています。冷え性は「万病の元」と言われますが、冷え性の本態である下肢の末梢血管収縮を改善しないまま妊娠すると母親だけでなく、子宮内の胎児は大変です。
冷え性は、母・児にとって最も危険な妊娠高血圧症(旧:妊娠中毒症)・胎盤早期剥離(早剥)を引き起こす危険性を秘めています。さらに冷え性は子宮胎盤血流量を減らし、子宮内の胎児の発育を抑える危険性を有しているからです。
 
冷え性は病気ではありませんので冷え性の定義はありません。私は冷え性の本態は下肢の末梢血管が持続的に収縮した状態、つまり血流の流れが滞った状態と考えています。体温学的には冷え性は低体温症と異なり、中枢体温(脳・直腸)は正常で、手足の末梢体温だけが異常に冷たい状態(末梢血管収縮)と考えています。つまり手足などの末梢組織に温かい血液が流れていない状態と考えて下さい。

近年、日本では小さい赤ちゃん(低出生体重児)が増えていますが、その要因として冷え症が最も関係していると考えています。冷え症(末梢血管収縮)は胎児に栄養を運ぶ子宮胎盤血流量が減少するからです。


★長時間のデスクワークは、機内の「エコノミー症候群」と同じ

2本足の人間が朝から夜までパソコンに向い休憩なしで仕事をすると、下肢から心臓に戻る「静脈還流」の流れが悪くなり、とくに心臓から下方に位置する腹部臓器(腸・肝臓・腎臓・子宮・卵管など)の血流量が減少します。夕方になると足が浮腫むのはそのためです。長時間のデスクワークはまさに機内の「エコノミー症候群」と同じと考えて下さい。
子宮内の胎児は、母親の睡眠不足と長時間のデスクワークに苦しんでいるのです。

妊婦さんが長時間デスクワークをすると、子宮を循環する子宮胎盤血流量が減少し、胎児に十分な酸素と栄養が運搬されなくなり、胎児の発育にブレーキがかかります。
妊婦さんの体重増加はカロリーの摂取量と消費のバランスで決まりますが、胎児の発育は「子宮胎盤血流量」に最も影響をうけるのです。母親がたくさん栄養をとっても「子宮胎盤血流量」を増やさなければ子宮内の胎児は大きくなりません。
低出生体重児(未熟児)を防ぐためには下肢から心臓にもどる「静脈還流」を増やす対策を日常生活に取り入れなければなりません。それが、睡眠、お風呂(温泉)・温かい食事・適度の散歩です。とくに水中散歩は静脈還流の増加に著しい効果を発揮します。

不妊症(卵管性因子)の方にも水中散歩をお勧めします。水中散歩をすると腸の血流が良くなり蠕動運動が増し便秘が改善しやすくなるように、卵管も活発に動き出し本来の機能を取り戻すことが期待されるからです。頑固な便秘や潰瘍性大腸炎で悩んでおられる方も水中散歩をお試し下さい。全ての病気の治療は臓器の循環血流を改善することから始まります。


★冷え性は、静脈系(排水管)のトラブル

人間の体を建物に例えると、人間も建物も2種類のパイプが走っています。人間の体には血液を運搬する動脈と静脈の2本のパイプ(血管)があります。家庭の台所には、きれいな水が出る給水管(動脈)と、汚れた水を外部に出す排水管(静脈)の二つの管があります。私は、冷え性は給水管(動脈)ではなく、排水管(静脈)の流れが悪くなった状態と考えています。つまり、台所の排水管に物が詰まって流れが悪くなったのと同じように、冷え性は下肢(静脈側)の末梢血管が細くなり、下肢から心臓に戻る静脈還流量が減少した状態と考えました。

冷え性や長時間のデスクワークで下肢から心臓に戻る静脈還流量が減少すると、全ての臓器に血流障害を引き起こします。臓器の血流障害こそが病気の「卵」なのです。冷え性は万病の元の諺があるように、冷え性は全ての臓器に害を及ぼし、放置すれば病気を発症します。冷え症を改善すると、人間は自然治癒力を高め病気を防ぐ効果があります。睡眠不足でストレスの多い人は血流を良くするために、時には血管の大掃除をしなければなりません。排水管(静脈)のトラブル解消(末梢血管拡張)に目覚ましい効果を発揮するのが水中散歩です。元気で長生き・若返りの秘訣は、十分な睡眠とお風呂、そして水中散歩です。血管の掃除(血流改善=水中散歩)を定期的に行うと、いつの間にか体調が良くなり、元気を取り戻し、若返ります。体調の悪い方、元気が出ない方、とくに高血圧症や腸の具合が悪い方に是非お勧めします。


★妊娠高血圧症は、冷え性症候群

昔から、冷え性は「万病の元」の格言がある様に、冷え症が慢性化すると全身の臓器に血流障害を招き、各臓器に機能障害(病気)を引き起こします。冷え性は末梢血管の収縮で、それ自体は病気ではありませんが、冷えを放置すると消化管・肝臓・腎臓・子宮など全ての臓器に血流障害を引き起こし、それまで正常に働いていた臓器の機能に異常が出てきます。冷え性の怖さを私に教えてくれたのが「妊娠高血圧症」の患者さんだったのです。

妊娠高血圧症の妊婦さんは、高血圧、足の浮腫、尿タンパクが出て、頭痛・便秘の人が目立ちます。肝機能も悪くなります。また妊婦にとって最も危険な胎盤早期剥離の半数は妊娠高血圧症に合併すると言われています。ところで、妊娠高血圧症の妊婦さんをよく観察すると、私の目には、妊娠高血圧症は単独の病気ではなく、静脈還流減少によって生じた複数の臓器の機能障害が互いに関連し合って出来た病気、つまり「冷え性」症候群に見えてくるのです。

妊娠高血圧症の原因はまだ何も分かっていませんが、私は冷え性つまり持続的な末梢血管収縮が腎血流を減少させ、血圧を上昇させていると考えています。私の予測が事実ならば、妊娠高血圧症は冷え性を改善し腎血流量を増やせば予防できると考えています。当然、妊娠高血圧症に付随して見られる頭痛・便秘・浮腫・肝機能の異常・胎盤早期剥離も改善する筈です。私が、腎血流減少説を強調する背景には、下肢から心臓にもどる「静脈還流」を増やす水中運動を行った妊婦さんには、妊娠高血圧症は殆んど出ないからです。


★妊娠高血圧症とは

奈良・東京でおこった脳出血の患者さんのたらい回し事件、まだ記憶に新しいと思いますが、妊娠高血圧症は胎児と妊婦さんだけでなく、産科医にとっても、とても怖い病気です。

妊娠高血圧症とは、妊娠20週以降から血圧が上昇する病気で、未だ確かな原因は分かっていません。血圧が140/90mmhg以上を軽症、160/110mmhg以上になると重症妊娠高血圧症と診断されます。妊娠高血圧症が怖い理由は、胎児の発育が悪くなる事、妊婦が突然に痙攣を起こし意識を無くす事(子癇)・脳出血を起こし、助かっても障害が残り、出血が止まらなければ死亡する。さらに、妊婦さんとお腹の赤ちゃんにとって最も危険な常位胎盤早期剥離(早剥)は、妊娠高血圧症に合併している事が多いからです。


★妊娠高血圧症候群の原因を解明する

・妊娠高血圧症の原因はまだ何も分かっていません。
日本産科婦人科学会は、胎児に酸素や栄養を補給する胎盤で、何らかの物質が異常に作られ、全身の血管に作用し、病気(高血圧)を引き起こすのではないかと考え研究を進めています。
一方、私は妊娠高血圧症の原因は胎盤ではなく、腎臓に原因があると考え、原因解明に向けて
九州大学(臨床薬理学教室)と共同で研究を進めているところです。それには以下の根拠があるからです。

・私は妊娠高血圧症の病態を次のように考えています。妊娠高血圧症は冷え性に特徴的な「持続的な末梢血管収縮」が腹部臓器(腎臓)に血流障害を引き起こし、それが慢性化する事によって妊娠高血圧症が形成されるという仮説を立てました。妊娠高血圧症の患者さんが下肢が浮腫んだり、尿中にタンパクが出るのも血流障害の仕業と考えています。

・Wikipediaによると、高血圧症の病態の基本は血管の攣縮である。何らかの理由で腎血流量が減少すれば腎臓からレニンの分泌が促進され、血圧上昇作用を持つレニン (RAA)系が活性化され高血圧症となる。腎血流量が増加すれば、レニン分泌は抑制されRAA系は活性化されない(引用終わり)。

・私は、RAA系のレニン説が事実ならば、腎臓の血流量を増やす工夫を日常生活に取り入れれば、妊娠高血圧症は予防できると考えました。では、どうすれば腎血流量を増やすことができるのでしょうか。それが、私が開業以来行ってきた水中散歩の「水の力」なのです。


★水の不思議な力

私は、開業した1983年から妊婦の運動不足対策として水中運動(水泳・散歩)を行っていますが、妊娠20週前から水中運動に参加された妊婦さんに妊娠高血圧症がほとんど出ません。
そこで、私は妊娠高血圧症の原因を見つけ出すために、水中運動を行うプールの中で実際に妊婦さんの行動を観察することから研究を始めました。すると水中運動をされる妊婦さんの行動に、当院で妊娠高血圧症が少ない理由が見えてきたのです。その妊婦さんのある行動とはいったい何でしょう。水中では陸上の散歩と違って、人間の体に不思議な現象が起きることが分かりました。
 
―私が見た、妊婦さんのある行動とはー
プールに入り、30~40分経った頃から、妊婦さんが次々にトイレに行かれる光景を見たのです。勿論、プールに入る前には排尿を終え、膀胱は空っぽの状態です。60分間の入水中に1~2回、プールから上がって一回、平均2~3回は排尿されている事が分かりました。妊婦さんに話を聞くと、少量ではなく、毎回気持ちが良いほどたくさん尿が出るそうです。この様に、水中運動には陸上の散歩と違って、利尿作用つまり腎血流量を増やす作用がある事を妊婦さんから学びました。浮腫の強い妊婦さんほどトイレに行く回数は増えます。逆に、トイレに行く回数が少ない妊婦さんは浮腫の少ない妊婦さんで普段から生活習慣に注意されている方です。プールから上がった妊婦さんの下肢を観察すると、足には浮腫や静脈瘤はまったく見られません。


★水中運動で尿量が増えるメカニズム

・心臓から腎臓に送られた動脈血は静脈血となり再び心臓に帰ります。しかし、腎臓には静脈血を心臓に戻すためのポンプ(圧)がありません。腎臓から出た静脈血が心臓に戻るには、下肢から心臓に戻る静脈還流の陰圧の力に引っ張られて心臓に戻るのです。何かの理由で下肢から心臓に戻る静脈還流量が減少すると、腎臓から出た静脈血の心臓への帰りが悪くなります。その結果、腎臓に入る動脈血、腎臓から出て行く静脈血、つまり動脈と静脈のバランスが崩れ腎血流量は減少するのです。
・温水プールで散歩(筋肉運動)をすると、水圧と浮力の水の力で下肢から心臓に戻る静脈還流量が増え、腎臓から出た静脈血は勢いを増した静脈還流に引っ張られ心臓に戻るのがより速くなります。その結果、腎動脈と腎静脈の圧バランスが改善され、腎臓を通過する循環血流量が増し、尿量が増え、ムクミが取れるメカニズムが成りたちます。 
・腎臓に入る動脈血(IN)と腎臓から出ていく静脈血(OUT)との関係は、他の臓器(脳・腸管・肝臓・腎臓・子宮など)にも全て当てはまります。冷え性は「万病の元」の格言は、冷え性(末梢血管の持続的な収縮)による静脈還流量の減少が体内の全ての臓器を機能障害に陥らせ、万病の原因になることを予言していたに違いありません。


★睡眠が病気を防ぐ

人間は、いかなる環境温度の変化(寒い・暑い)に遭遇しても、体温を37度に安定させようとします。人間は寒い時には末梢血管を収縮(交感神経優位)、暑い時には拡張(副交感神経優位)して体温調節を行っています。人間の体温(中枢)は37度と一定ですが、下肢(末梢)の体温は、下降(血管収縮)と上昇(血管拡張)を繰り返しながら体温調節を行っています。人間の体温調節は末梢血管の収縮と拡張、つまりアドレナリンのON/OFFによって調整されています。人間は末梢血管(下肢)が収縮と拡張のリズミカルな変動を示している時がより安全で、健康状態を維持することが出来ます。

冷え症の人は体温が37度で正常であっても、足の体温は冷たく、末梢血管は持続的に収縮したままです。交感神経優位 つまりアドレナリン 「ON」の状態が持続すれば、全ての臓器は疲れて危険信号を発します。そのシグナルが頭痛・肩こり・便秘・浮腫・疲れ易いなどの症状です。この様な不快な症状がある時は、病気の前兆です。しっかり睡眠をとってください。睡眠にはアドレナリン「OFF」の末梢血管拡張作用があり、全身臓器の血流障害は改善されるからです。

人間は末梢血管が「収縮」と「拡張」を繰り返していれば事故・病気は防げるのですが、冷え症、つまり末梢血管が持続的に収縮したまま放置すると、もともと正常であった臓器は血流障害によって機能障害(病気)へと進行するのです。冷え性は万病の元、この言葉の持つ意味は、冷えを無くせば全ての病気は防げる、ではないでしょうか。


★睡眠は善玉、長時間のデスクワーク・煙草・睡眠不足は悪玉

人間が寝た状態(水平位)では心臓と下肢の高さはほぼ同レベルで、下肢の静脈血は心臓に戻りやすくなります。ところが、椅子に座って足を動かさない長時間のデスクワークは、下肢は心臓の位置より低いため重力の関係から、下肢から心臓に戻る静脈還流は水平位にくらべ、戻りが悪くなります。とくに末梢血管が収縮した冷え性の人が長時間 パソコンに向かうと、下肢から心臓に戻る静脈還流が減ります。冷え性つまり静脈還流減少によって腹部臓器(消化管・肝臓・腎臓・子宮・卵管など)を循環する血流が慢性的に減少すると、それらの組織は慢性的な血流減少によって細胞に異変を招き、それが体調を狂わしているのです。

心臓(左心室)から出た動脈血と心臓(右心房)に戻る静脈血が等しければ全ての臓器に循環障害は起きないのですが、冷え症の人は心臓への戻りが悪いために、本来心臓に戻るべき静脈血が臓器や静脈側の血管内に貯留(プーリング)されます。子宮内の胎盤を超音波で観察すると、胎盤のうっ血像や血管怒張がしばしば観察されます。胎盤のうっ血像と同様の現象が、頭・腸・肝臓・腎臓などに起こっても不思議ではありません。当然、同じ現象が起こっていると考えるべきです。

冷え性の妊婦さんに頭痛、肩こり、便秘、浮腫、高血圧症などの不快な症状が体の広範囲にわたる理由は、下肢から心臓に戻る静脈還流の減少が全ての臓器に血流障害を及ぼしているからです。事実、それらの不快な症状や病気は、水中散歩(静脈還流増加)によって、どの症状も見事に改善するのです。


★心臓の役割(収縮と拡張)

心臓は心収縮力によって動脈血を全身に送り出す仕事と、心臓が拡張するときの力(陰圧)で静脈血を心臓に引き戻す二つの仕事を行っています。すなわち、肺で酸素化された動脈血は心臓の「収縮」によって心臓(左心室)から大動脈に駆出され、脳や消化管・肝臓・腎臓・子宮などの腹部臓器や筋肉に酸素を運搬します。腹部臓器や筋肉などに酸素を運搬した血液は静脈血となって再び心臓(右心房)に戻ります。しかし、腹部臓器には静脈血を心臓に戻すためのポンプはついていません。冷え性の人に便秘・頭痛・肩こり・浮腫などの不快な症状が多いのは、下肢から心臓に戻る静脈還流量が減少しているために腸・腎臓・脳・下肢にいった血液の心臓への戻りが悪くなっているからです。水中散歩で静脈還流量を増やすと、その不快な症状は劇的に改善します。


★下肢から心臓に戻る「静脈還流量」を増やすことが、健康で長生きの秘訣

静脈血が心臓に戻る血流を「静脈還流」と言います。静脈還流は心臓が「拡張」するときの力(陰圧)と下肢の筋肉を動かすポンプによって心臓(右心房)に引き戻されます。下肢には「第2の心臓」と呼ばれる筋肉でできた補助ポンプがついていますが、腹部臓器には静脈血を心臓に戻すポンプはついていません。そのため腹部臓器から出た静脈血は、下肢から心臓に戻る静脈還流に引っ張られて心臓に引き戻されるのです。人間が病気を防ぎ健康を維持するためには腹部臓器の血流を良くしなければなりません。それには日頃から、下肢から心臓に戻る静脈還流が増える工夫を日常生活に取り入れることが重要です。タバコ・睡眠不足・長時間のデスクワーク・運動不足などは静脈還流を減少します。タバコを止め、睡眠・適度な運動(散歩)・温泉、特に水中散歩は静脈還流を増やします。
現代社会は妊婦さんを夜遅くまで椅子に座らせ、子宮内の胎児が苦しんでいるのも知らずに残業させています。朝からの長時間のデスクワークは、下肢から心臓に戻る静脈還流を減少させ、頭痛・便秘・浮腫などの不快な症状をつくり出し、同時に妊娠高血圧症、胎盤早期剥離、早産、低出生体重児を増やす要因をつくり出しています。妊婦さんを夜遅くまで椅子に座ったまま連続的に仕事をさせる事は、母親以上に子宮内の胎児を苦しめているのです。妊婦さんの労働時間・仕事内容を見直さなければ、低出生体重児は今後もさらに増え続けるでしょう。子宮内の胎児の為にパソコンを離れ、時々足踏みをされて下さい。会社に自転車こぎがあったら、足を動かすことによって子宮胎盤血流が良くなり、胎児は喜んで動き出すでしょう。静脈還流量の増加、それが人間の持つ「自然治癒力」を助け、病気を防ぐのです。


★妊婦さん、 睡眠不足と長時間の「デスクワーク」に注意!

心臓の拡張期の力を手助けする補助 ポンプを「第2の心臓」と呼びますが、下肢の筋肉(ふくらはぎ)を動かす事によって補助ポンプが働き、血管内の静脈血を下肢から心臓に押し上げ、心臓の負担を軽くします。しかし、長時間のデスクワークでは足を殆ど動かしませんので、この「第2の心臓」はあっても役に立ちません。これが、所謂、機内のエコノミー症候群です。
 
睡眠、つまりベッドに寝た状態(水平位)では重力がかかりませんので補助 ポンプを使わなくても血液は下肢から心臓にスムーズに引き戻されます。だから睡眠を十分にとると疲れ、頭痛、浮腫がとれるのです。ところが、長時間椅子に座ったままデスクワークすると補助ポンプは作動しないため下肢から心臓に戻る静脈還流量が減り、静脈側に血液が貯留されます。午前中は足に浮腫みは出ませんが、夕方になると浮腫みが強くなるのは静脈還流減少によるものです。夕方にお腹が張ったり、胎動(胎児の動き)が少なくなるのは子宮胎盤血流量が少なくなっている証しです。