6.重症黄疸は、生後数日間の栄養不足が原因

6−1.重症黄疸の原因と予防法
重症黄疸は生後数日間の栄養不足と胎便排泄の遅延が原因である。新生児が栄養不足になると赤血球が壊れ易く、黄疸の元である毒性をもったビリルビンが血中に増え重症黄疸(高ビリルビン血症)となる。そのビリルビンは血中と胎便中に含まれる。血中のビリルビンはタンパク質と結合し肝臓で無毒化され腸管内に出て便として排出される。一方、栄養不足が続くと脂肪が分解され代謝産物である遊離脂肪酸が血中に増え、ビリルビンとタンパク質との結合を妨げる。何故ならば、タンパク質はビリルビンよりも遊離脂肪酸と強く結合する特性を持っているかである。タンパク質と結合出来ないビリルビンが血中に増えると、神経毒をもったビリルビンは脳に運ばれ脳神経細胞に害を与える。また、胎便の排出が遅れると便中のビリルビンが血中に再吸収され血中のビリルビン濃度はさらに上昇する。つまり、重症黄疸の予防法は生後数日間の栄養不足をなくし、胎便を早く出すことである。新生児の黄疸は出て当たり前と考えられているが、治療を要する重症黄疸のほとんどは栄養不足が原因である。

6−2.重症黄疸の発生頻度
重症黄疸の発生頻度は施設間の保育管理法の違いで大きく異なる。多い施設では2〜3人に一人(約30〜50%)に重症黄疸の治療(光線療法)が行われている。通常は10〜20%前後、当院では1%以下(30/12.000人)である。第6条の完全母乳を積極的に行なう施設では栄養不足のために重症黄疸が強く出る。当院で重症黄疸がほとんど出ない理由は胎便排出が早く、母乳分泌不足の期間、基礎代謝量(50kcal/kg/日)に見合うカロリーを人工乳で補い栄養不足を防止しているからである。生後数日間の栄養不足が強いほど赤血球は壊れビリルビンが血中に増える。栄養不足では脂肪分解が促進され遊離脂肪酸(FFA)が血中に増加しビリルビン代謝は障害される。体重減少の強い赤ちゃんに重症黄疸が多い理由は、重症黄疸の発生メカニズムに栄養不足が関与しているからである。重症黄疸を防ぐためには、出生直後の体温管理(保温)によって胎便排出を促し、母乳が出始めるまでの栄養不足の期間を人工ミルクで不足分を補う事である。

6−3.重症黄疸を防ぐ目的(メリット)
・重症(核)黄疸を防ぐことによって、脳性麻痺・難聴の発生を抑制する
・重症黄疸を防ぐ保育管理(保温+早期混合栄養法)によって、低血糖症・頭蓋内出血を防止する(人工ミルクにはビタミンKが多く含まれている)
・重症黄疸の治療(光線療法・交換輸血)中の母児隔離を防ぎ、母児接触を保つ、
・NICU不足を改善する、治療は原則としてNICU入院となるからである、
・新しい保育管理(保温+早期混合栄養法)の導入によって、低出生体重児(2000g〜2500g)のNICU入院児を減らす効果は大である。保温によって初期嘔吐がなくなり、経静脈栄養(点滴)が不要となったからである。
・出生直後の保温(生後2時間の保育器内収容)によって児の消化管血流量を改善し、初期嘔吐・胎便性の腸閉塞などの消化管の病気を防ぐ

■経済的効果:国民医療費の抑制・社会福祉費の削減効果

低血糖・重症黄疸・頭蓋内出血・消化管疾患などの入院治療費だけで数千億円の予算削減が可能、NICU入院児の抑制、障害児発生防止、などによる国民医療費・社会福祉費の削減効果、税収入の増加は兆単位と推測される。重症黄疸を防ぐメリットは数々あるにもかかわらず、重症黄疸を厚労省はなぜ防ごうとしないか、国民医療費、発達障害が増える理由は病気を防ごうとしない厚労省にも責任の一端がある。