1.超早期混合栄養のメリット・デメリット
当院では、生後一時間目に体重(kg)あたり10mlの5%糖水を哺乳瓶で飲ませます。たとえば、3kgの赤ちゃんの場合は30ml(一回量)になります。糖水にはビタミンK欠乏性出血症を防ぐためにVit Kシロップを入れます。これで出生直後の低血糖症と頭蓋内出血などの新生児出血症をほぼ完全に予防します。驚く事に、当院では治療を要する重症黄疸は殆ど出ません。低血糖症の赤ちゃんも出ません。それは、赤ちゃんを出生直後に温かい保育器(34℃)に入れ、冷え症(末梢血管収縮)を防ぎ、肝臓における肝グリコーゲン分解による糖新生を促し、さらに生後一時間目に糖水・その後3時間ごとに母乳を吸わせた後に人工ミルクを飲ませているからです。
日本人の赤ちゃんは欧米人に比べ新生児黄疸が強く出ると言われていますが、食欲(吸綴反射)があり、胎便排泄が早く(便秘をしない)、栄養をきちんと摂取している赤ちゃんには治療を要する重症黄疸は殆ど出ません。ところが、日本の寒い分娩室(約25℃)でカンガルーケアを行うと新生児は冷え性(末梢血管収縮)となり、嘔吐のため食欲が出ず、胎便排泄が遅れます。しかも、完全母乳のため栄養と水は殆ど摂取できていません。つまり、厚労省の「授乳と離乳の支援ガイド」は、発達障害のリスク(低血糖症・脱水・重症黄疸)を増やしているのです。超早期混合栄養のメリットは体重減少を抑えるだけでなく、赤ちゃんを発達障害から守る事が一番の目的です。デメリットは保育器の電気代と粉ミルクの費用に僅かなお金がかかるくらいです。
2.新生児の初期嘔吐は、冷え症(末梢血管収縮)が原因
生後間もない赤ちゃんに糖水・人工乳を飲ませると30%〜40%の赤ちゃんが嘔吐します。現代産科学は赤ちゃんの初期嘔吐を生理的現象と考え、原因を解明しようとしません。ある新生児科医は糖水・人工乳は赤ちゃんに非生理的な飲み物だと決め付け、糖水・人工乳を悪者扱いにしますが、本当の嘔吐の原因は低体温症(冷え性=末梢血管収縮)が原因です。久保田産婦人科麻酔科医院では、出生直後の赤ちゃんが低体温症に陥らない様に、温められた保育器内(34℃⇒30℃)に2時間収容し、徐々に寒い分娩室(約25℃)に馴染ませます。すると、生理的と考えられていた初期嘔吐は出なくなり、どの赤ちゃんも生後1時間目から糖水を上手に飲み出します。人工乳は常に悪者扱いにされますが、もし日本から人工ミルクがなくなれば発達障害児が驚異的に増える事は容易に予想できます。当院では低血糖症・脱水・重症黄疸を防ぐために、母乳が満足に出始めるまでの生後数日間、直母後に人工ミルクを飲ませます。母乳分泌量が増えてくれば、赤ちゃんは人工乳を欲しがりません。直母後に赤ちゃんが人工乳を欲しがるのは、母乳分泌が不足しているからです。
3.現代産科学の初歩的ミス
日本の寒い分娩室に生まれた出生直後の赤ちゃんは生後1時間以内に2℃〜3℃の体温下降を認め、現代産科学はその体温下降を生理的現象と安易に考えています。しかし、出生直後の体温管理(保温)によって初期嘔吐が出なくなった事などから、出生直後の2℃〜3℃の体温低下は生理的現象ではなく、低体温症、あるいは一過性の低体温ショックと考えを改めるべきです。出生直後の体温下降を生理的現象と考え体温管理(保温)をしないか、病的な低体温症と考え体温管理を行うかによって、両者間のその後の適応過程に著しい臨床像の違いが出てきます。新生児のチアノーゼ、初期嘔吐、低血糖、重症黄疸などは、生直後からの体温下降を生理的現象と安易に考え体温管理を怠った為に発症した、予防可能な新生児に特有の病気なのです。現代産科学の重大な間違いは、出生直後の低体温症を生理的現象と考え、体温管理(保温)を怠り、初期嘔吐などの適応障害を安易に生理的現象と決め付けている事です。
4.重症黄疸は、発達障害(自閉症)の危険因子
母乳分泌に乏しい生後数日間の脱水と栄養不足を人工乳で補うだけで、発達障害(自閉症)の危険因子である脱水症、低血糖症、重症黄疸、頭蓋内出血を、ほぼ完全に防ぐ事ができます。例えば、赤ちゃんは黄疸が出て当然の様に考えられていますが、治療を要する重症黄疸は生後数日間の栄養不足と便秘(胎便排泄遅延)が主な原因です。生後数日間の脱水と栄養不足を改善してあげれば重症黄疸はほぼ完全に予防できます。久保田産婦人科麻酔科医院では、治療を要する重症黄疸の赤ちゃんはほとんど出ません。この事は、共同新聞(平成25年9月)が全国に配信しました(記事を見る)。重症黄疸は発達障害のリスクを増やすだけでなく、国民医療費の増加、NICU不足を促進します。治療を要する重症黄疸を防ぐ事は、国(厚労省)・学会にとっては嬉しいニュースの筈ですが、何故か久保田式の新生児管理法は全く評価されません。むしろ、学会から反発がある位です。
5.発達障害(自閉症)の原因は、遺伝・ワクチンではない
日本では、母乳促進運動が始まってから発達障害児が驚異的に増えています。これまでの疫学調査では、遺伝病説・ワクチン説・環境因子説など様々な要因が報告されていますが、福岡市と横浜市の調査研究から、遺伝病説・ワクチン説は否定的です。福岡市の調査では、完全母乳(1993年)とカンガルーケア(2007年)が普及した時期に一致して発達障害児が驚異的に増加しているからです。また横浜市ではワクチン接種を中止したにも関わらず、中止後も発達障害児が増加した事が分かっているからです。
出生直後のカンガルーケアと完全母乳は、新生児を低血糖症・脱水・重症黄疸に陥らせる危険性が大です。発達障害児を防ぐ秘訣は、母乳が出ない生後数日間の脱水・栄養不足をいかに防ぐかが鍵です。母乳が分娩直後から満足に分泌するのであれば、赤ちゃんが脱水症・飢餓状態に陥る心配はありません。しかし、初産婦では生後3日間の母乳分泌量は極僅かで、母乳以外の糖水や人工ミルクを全く飲ませなければ、赤ちゃんは容易に飢餓(脱水症・低栄養)に陥り、脳の発育に悪影響を及ぼします。発達障害の調査研究は精神科医・生理学者・小児科医が中心となって行われていますが、本当は周産期医療の産科側から調査研究を行う必要があります。内外の学会誌には、新生児早期の低血糖症・高Na血症性脱水・重症黄疸が発達障害の原因とする発表が相次いでいます。しかし、現代産科学には、発達障害の危険因子である低血糖症・重症黄疸・脱水を防ぐための予防策に関する研究は全く進んでいません。重症黄疸になったら治療(光線療法)する、低血糖症になりケイレン発作が出たら治療する、現行の方法では発達障害を防ぐ事は出来ません。ケイレン発作があった時は、すでに手遅れです。先ず、出生直後の寒い分娩室でのカンガルーケアを中止し、黄疸が出ない様な管理をすれば低血糖症・脱水・重症黄疸の全てが予防で き、発達障害の増加に歯止めが掛かると予測します。福岡市立こども病院のデータ(A病院とB病院の比較)は、そのことを示唆しているのです。
6.安産と難産、母乳と人工乳
お産には安産と難産があります。安産の妊婦さんは自然分娩で産みます。難産の妊婦さんが自然分娩にこだわると、事故を起こします。難産の妊婦さんは自然分娩ではなく帝王切開で産んだ方が安全です。同様に、母乳が出生直後から十分に出るならば、人工乳を飲ませる必要はありません。母乳が出ないのならば、人工乳を飲ませるべきです。完全母乳にこだわり過ぎると事故(低血糖症・重症黄疸・脱水)を起こします。お産で大事な事は、自然分娩・完全母乳にこだわらないことです。難産なら帝王切開、母乳が出なければ人工乳です。母子の絆は妊娠された時から始まっています。人工乳を飲ませたからと言って、母子の絆が悪くなる事は絶対にありません。赤ちゃんを科学すれば、人工乳の有難さが分かって貰える筈です。現代のお産、とりわけ出生直後の正常新生児の管理には科学がありません。科学がないところに事故が起こるのは当然です。
7.出生直後のカンガルーケアと完全母乳哺育は、百害あって一利なし
厚労省は、「母乳育児を成功させるための10カ条」の第6条:医学的根拠なく母乳以外の糖水・人工ミルクを飲ませない、を柱とする「授乳と離乳の支援ガイド」を発表しました。ところが、国の支援ガイドには、赤ちゃんを脱水と栄養不足から守る安全対策が全くありません。その為に、日本で産まれるほとんどの赤ちゃんは母乳が出始めるまでの生後3〜5日間、重度の飢餓状態(脱水+栄養不足)に陥っています。出生時体重から10%以上の体重減少、つまり生後数日間の脱水・飢餓が発達障害のリスクを高めると学会誌に報告されています。水と栄養が不足すれば、脳神経の発育が抑えられ、脳に永久的な障害を遺すリスクがある事は医学的常識です。妊産婦の皆様は、完全母乳にこだわらず、赤ちゃんの脱水と飢餓(低栄養)に注意され、母乳が出始める生後数日間だけでも人工ミルク(水+栄養)を飲ませてあげて下さい。日本の助産師は完全母乳の長所は知っていますが、短所(飢餓)の危険性については勉強不足です。日本の寒い分娩室での出生直後のカンガルーケアと人工ミルクを飲ませない完全母乳哺育は赤ちゃんに「百害あって一利なし」です。
8.「授乳と離乳の支援ガイド」の見直しを
平成24年6月14日 厚労省に出向き、泉 陽子 雇用均等・児童家庭局・母子保健課長に直接お会いし出生直後のカンガルーケア・完全母乳哺育・母子同室の危険性を報告しました。その席で、発達障害の危険因子である低血糖症・脱水・重症黄疸・頭蓋内出血を防ぐ為の安全対策が欠如した「授乳と離乳の支援ガイド」の見直しを求めました。しかし、学会が出生直後のカンガルーケアを早期母子接触に名称を変更しただけで、厚労省は支援ガイドの本質的な中身の見直しは、全く行われていません。
9.厚労省は、未来型の新生児管理の導入を
病気の診断と治療は医療機関が行いますが、赤ちゃんの病気を防ぐ予防医学の普及は厚労省の役割です。厚労省は子宮頸癌の予防にワクチン接種を推奨した様に、赤ちゃんの飢餓(脱水+低栄養)を防ぐ為のワクチン(人工ミルク)の導入を、母乳が出ない生後3日間だけでも取り入れるべきです。人工ミルクは子宮頸癌予防のワクチンと違って副作用もなく、安価であり、国の経済的負担は殆んどありません。人工ミルクで飢餓を防ぐことによって、赤ちゃんの脱水・低血糖・重症黄疸・頭蓋内出血などの発達障害のリスクを著しく減らすことが可能です。同時に、NICU不足を改善することによって「たらい回し」を防止し、また国民医療費・社会福祉費などの削減効果は兆円規模になると予測します。
予防医学を重視した未来型の新生児管理法を切望しているのは、私自身ではなく、この世に産まれて来る全ての赤ちゃんなのです。厚労省は世界に先駆け、発達障害のリスクを少なくする為のワクチン(人工ミルク)を取り入れ、その効果を世界の赤ちゃんにも発信すべきです。周産期医療に予防医学を導入する厚労省の勇気ある指導が、日本の赤ちゃんを幸せにするのは間違いありません。予防医学導入の薦めは、当院で生まれた15.000人の赤ちゃんからのメッセージ(臨床成績)です。厚労省の予防医学を基盤とした「お産改革」こそが、日本の未来を明るく元気にすると確信します。
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