環境温度が糖代謝(血糖値)に及ぼす影響 |
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出生直後の環境温度の違いが早期新生児の血糖値および消化管機能に及ぼす影響について、次の3群で比較検討した。
A群:通常の室温管理(cool群)、B群:生後2時間の保温(warm群)、C群:生後2時間の保温(warm群)+超早期混合栄養をした群である。
A群、B群の栄養法は、生後8時間目に5%糖水20ml、C群の超早期混合栄養法は生後1時間目に5%糖水20ml、その後4、7時間目に人工乳20mlを飲ませた。
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出生直後からの血糖値はA群で最も大きく下降し、その後の上昇は生後9時間目まで認められなかった。B群は生後2時間の保温のみで血糖値の低下に抑制効果が認められた。A 群とB群の血糖値低下の相違は、両群の体温下降(低体温)から恒温状態に至るまでの体温調節(産熱)に要した消費エネルギー量と肝臓における糖新生の違いに影響したものと考えられた。
この研究で注目すべき点は、B群、C群に初期嘔吐が認められなかった事である。A群は生後8時間目に5%糖水20mlを摂取したにもかかわらず血糖値の上昇を認めなかったが、保育器内に収容したB群、C群では、糖水・人工乳摂取後にすみやかな血糖値の上昇を認めた。このことはcool群とwarm群における分娩直後から恒温状態に至るまでの体温調節の違い、つまりA群のP-DBTの持続的な低下、B群、C群のリズミカルな体温変動、この体温変動の違いが消化管機能に影響を与えたためと考えられる。即ち、A群は中枢と末梢の体温較差が著しく、またP-DBTの低下が長時間に及んでいることから、A群はB群に比べ消化管血流量が少ないことが予測される。つまり消化管血流量の良、不良が、両群の消化/吸収/蠕動運動などの消化管機能に違いをもたらしたと考えられた。
A群の糖水摂取後に血糖値上昇が見られなかった理由は、糖水の胃内容消失時間がA群はB群より長時間を要したためである。その証拠は、両群の胃内糖水の胃内容消失時間を超音波断層装置で観察すると、B群 の消失時間は1時間以内であり、A群の胃内糖水量は1時間経過後もほとんど減少していなかったからである。B群の糖水摂取後に血糖値が速やかに上昇した理由は、糖水が胃から小腸に短時間に移動し腸管から吸収されたことを物語っている。
■初期嘔吐は、低体温症(冷え性)が原因
生理的と考えられている初期嘔吐のメカニズムは、飲んだ糖水やミルクが小腸に移動しないまま胃内に停留している事に起因する。保温をしないCool群(A群)に初期嘔吐が多く見られる理由は、胃内容消失時間が長時間を要するためである。つまり、嘔吐のメカニズムは、満腹(full
stomach)の状態でミルクを飲ませるからである。即ち、初期嘔吐は生理的現象ではなく、低体温症(冷え性)に伴う消化管血流量の減少(蠕動運動の低下)が原因である。胎便排泄遅延・胎便性イレウスの原因も低体温症が原因である。
早期新生児の初期嘔吐、胎便排泄遅延、胎便性イレウスなどの消化器疾患が出生直後の低体温症(冷え性)に起因しているのならば、出生直後の低体温症(冷え性)を防ぐ体温管理(保温)を低出生体重児と同様に正常新生児に対しても行うべきである。寒い分娩室での生後30分以内のカンガルーケアは、低体温(冷え性)を促進するため、厚労省は生後30分以内のカンガルーケアを直ちに止める様に通達すべきである。NICU不足が加速する理由は、低体温症(冷え性)の赤ちゃんが増えたからである。
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