2003年7月16日 西日本新聞掲載記事

 赤ちゃんが眠ったまま急死する「乳幼児突然死症候群」(SIDS)を防ぐには、どうしたらいいか。原因もはっきりしていないため明確な対策も打ち出されていない中、福岡市中央区の産婦人科、久保田史郎さん(58)が提言「SIDS予防7ヵ条」をまとめた。独自の研究を基に、着せ過ぎなどによる放熱障害がSIDSの原因としてみており具体的な注意点を列挙した。

■ 年間500人死亡
 SIDSになるのは、一歳未満の赤ちゃんが大半。国内では約二千人に一人の割合で発症し、年間約五百人が死亡している。「そもそも病気ではないから死後に調べても原因は分からないはず」という久保田さんは、赤ちゃんの体温調節の仕組みに注目する。
 赤ちゃんは寒ければ激しく泣いて熱を出す。しかし、暑いときは大人のように自分で服を脱いだり、布団から出たりするのは簡単にはできないため、服の中に熱がこもり、放熱障害になりやすい。放熱できなければ自分の体からなるべく熱を出さないように眠り続け、呼吸も、心拍数も減り、低酸素血症血圧低下を招き、SIDSに結びつく、というのだ。
 こう考えると元気な赤ちゃんがSIDSになることも説明がつく。

■ 危険な組み合わせ
 久保田さんは約二十年前に産婦人科医院を開業。保育器の温度が高くなると赤ちゃんの呼吸が弱くなる事に気づき、体温などのデータを取っていた。そして、四年前の冬、生後二週間目の赤ちゃんを親が熱めのお風呂に入れたところ、急に呼吸が止まったケースがあったため、高温環境とSIDSの関係の着目するようになったという。
 今回、久保田さんがまとめった「SIDS予防七カ条」=別項参照=は一般的にも注意が必要とされるうつ伏せ寝と着せすぎの組み合わせを「最も危険」と指摘。腹部と衣服の間に熱がこもる「うつ熱」が生じやすいとしている。危険な例としては、睡眠中の赤ちゃんへの毛布のかけ過ぎ、帽子や靴下をつけたままにすること、ほっとカーペットの上に寝かせる事、などを挙げている。

■ 周りの大人たちが
 こうした具体的な注意点を併せて久保田さんは「発熱とうつ熱の違いを学習してほしい」と強調する。風邪などの病気による発熱は、赤ちゃんが泣いたり、体が震えたりして体温が上昇するが、うつ熱は着せすぎなどで熱がこもる。赤ちゃんが泣かないで静かに眠り続けているからといって安心せず、汗などを見て着せ過ぎではないか確認するべきだという。
 久保田さんは「赤ちゃんをSIDSから守るためには周りの大人たちの注意が必要。赤ちゃんの身になって、放熱障害を考えてほしい」と呼びかける。予防のための七カ条は、十五日に福島県郡山市で開かれた日本新生児学会で発表。九月十三日に福岡市である小児麻酔学会でも発表する予定だ。