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産科医不足や妊婦のたらい回し。その一方で、妊娠しても直前まで診察を受けない若い妊婦が増えているなど、妊婦を取り巻く社会的な状況は深刻化しています。妊婦が充実した明るい妊娠生活を送り、安心してお産を迎えるためのアドバイスを産科医で麻酔科医でもある久保田産婦人科麻酔科医院(福岡市)の久保田史郎医師に聞きました。 正しい知識、体力、自信 この子を無事に産むことができるだろうか――妊娠・出産にともなう不安を少しでもなくし、安心してお産を迎えたいのが妊婦の願い。 「それには妊婦自身がお産についての正しい知識を身につけることが大事。正しい食生活習慣と適度な運動で体調を整え、お産という大きな仕事に向けて肉体的にも精神的にも自信をもつのが安産の秘訣」と久保田医師は述べる。お産は自然が良いと言われますが、「お産にこそ予防医学の導入が必要」と訴える久保田医師。お産に医療事故が多いのは、生理的現象である妊娠・出産には予期せぬ異常がひそんでいるからと話す。例えば、妊娠高血圧症などの病気になってから対処するのではなく、高血圧を未然に防ぐための生活習慣の改善が大事と話す。 妊婦にあてはめると、異常妊娠のうち、子宮外妊娠、流産、前置胎盤などは予防できない病気。しかし、妊娠糖尿病や、たらい回しで問題になっている早産・胎盤早期剥離・妊娠高血圧症(旧:妊娠中毒症)などの病気は、食事の不摂生や過労・睡眠不足・タバコ・ストレス・長時間のPC・運動不足など、全身の血液の流れを悪くする生活スタイルを改善することによって予防できると話す。 生活習慣の改善が難産を予防 妊娠中の体重増加が13〜15`以上になると、妊娠高血圧症や妊娠糖尿病の合併症が増える。また赤ちゃんは育ち過ぎ、微弱陣痛、産道の脂肪過多、予定日超過などを起こし、難産の原因になるとされている。 久保田医師の調べでは、妊婦の肥満はカロリーの取り過ぎや運動不足だけでなく、朝食ヌキ、夕食時間が遅い、夕食後のデザート(果実・アイスクリーム)といった不規則な食生活習慣が主原因という。また最近は、冷え性・便秘の妊婦さんの増加に危険信号を発す。妊娠前の悪い生活習慣をそのまま引きずっているケースが多いようです。現代のライフスタイルでは『たらい回し』の原因となる早産、胎盤早期剥離、妊娠高血圧症が増え低出生体重児を生む危険率が高くなる。久保田医師は、特に冷え性・便秘の妊婦さんに生活習慣の改善を促がしている。 水中散歩で低出生体重児を防ぐ 妊婦のエクササイズとして久保田医師が先駆的に取り組んでいるのが「水中散歩」。温水プールの中を歩くだけの運動ですが、身重の妊婦にとって腰やひざなどに負担をかけることなく、泳げない人も行えるのが利点。水中散歩で静脈還流を増やすことによって冷え性、頑固な便秘、早産、胎盤早期剥離、妊娠高血圧症などの予防・治療に著効と話す。水中散歩のメカニズムは浮力と水圧。陸上と違い、浮力と水圧によって末梢血管が拡張し、運動不足のために悪くなっていた血流が良くなります。とりわけ、歩くことで“第2の心臓”である下肢(足)から心臓に戻る静脈還流が増え、それにともなって各部位を通る血流が改善され、老廃物もたまることがなくなるのです。血流の改善によって肩こりや腰痛などが解消されたり、浮力によって逆子が直ったという人もいます。仲間と楽しくプールに入ることで精神的にリラックスできるといった効果も期待できるのです。現在、各地の自治体からも妊婦支援・少子化対策の一環として注目を浴びている。 痛みを和らげる産科麻酔 少しでも楽なお産がしたいけど、麻酔をして産むのは心配……という妊婦は多い。 分娩時に麻酔を施す無痛分娩(産科麻酔)は、欧米先進国ではお産の9割以上にのぼります。わが国での普及は低いですが、麻酔科を経験して産婦人科医となった久保田医師は、「陰部神経ブロック法」という局部麻酔の方法を採用。分娩時の痛みの7割を軽減することができると話す。 無痛というより“和痛(痛みを和らげる)分娩”。胎児が産道を通る際の最大の痛みを取り除きながらも、産んでいる感覚は残り、わが子の誕生の瞬間も冷静に受け止められるといわれています。 限られた麻酔範囲のため、妊婦の呼吸や循環系への影響、子宮収縮におよぼす副作用がないことが特徴とされ、同院で実施した約7000例で合併症は報告されていません。“この方法であれば次の子も欲しい”といった声は多く寄せられているといいます。 わが国で無痛分娩が普及しない理由は、産科麻酔への誤解と認識・情報不足にあるようです。自然分娩の短所(痛み)を科学(麻酔)で補い、母児を痛みから守るのが安全で快適なお産と話す。「正しい知識、生活習慣の改善、水中散歩、そして分娩の痛みを和らげてあげる――こうした点から妊婦にお産への自信をもたせ、最大限に支援していくのが本当の少子化対策だと私は思っています」 |
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