妊婦の理想的体重増加について
 安産・自然分娩のためには、妊娠中の体重増加が生理的範囲内で、しかも、その妊婦さんの身長や体重(肥満度)に見合った”理想的な体重増加”と”理想的な赤ちゃんの体重”が望ましいのです。
【体重増加】 最近の我国における妊婦の体重増加の平均は11.4キログラムと言われています。13.0〜15.0キログラム以上増えると妊娠中毒症や糖尿病などの合併症を引き起こし、分娩時には赤ちゃんの巨大化傾向や微弱陣痛・軟産道の脂肪過多・予定日超過などの異常を起こし難産の原因となることが知られています。しかし、妊婦さんの身長や妊娠前の体重は一様ではありません。そのため、その人に見合った理想的な体重増加が必要となるのです。
【肥満の原因】 一般に過食によるカロリーの摂りすぎ、運動不足などが肥満の原因とされています。しかし、当院の(病的)肥満妊婦についてアンケート調査を行ったところ”生活習慣”に問題があり、例えば、朝食抜きで夕食が午後9時以降という共通の間違った(食)生活習慣が多いことがわかりました。そのため、当院の母親教室では当院独自の生活様式の改善や栄養指導を行っております。
この内容は、
「栄養指導が妊婦の体重と新生児出産体重に及ぼす影響に関する研究」と題し、日本産婦人
科学総会(1996年4月横浜)において発表しました。その詳しい内容は出版した本「THE OSAN」をご覧下さい。

自然分娩の条件
 多くの妊婦さんは、妊娠が自然な生理現象だから誰もが自然分娩が可能であると、信じている方が多いようです。 ここに大きな間違いがあることに気づかなければいけません。妊娠・分娩が生理現象であるからこそ、生理的範囲内の妊娠中の体重増加、そして、安産のための理想的な赤ちゃんの体重が要求されるのです。
 過去、我国のお産のほとんどで自然分娩が可能であった時代の背景の一つには、肥満妊婦と大きい赤ちゃんが少なかったことが挙げられます。しかし、戦後の高度経済成長は栄養過多のみならず、日常の生活習慣まで変えてしまい、肥満妊婦と大きい赤ちゃんをつくる結果となり、難産が増え人工的な陣痛促進剤や帝王切開による分娩が増加しているのです。
 終戦後の低栄養時代、昭和21年の我国の新生児の平均体重は2871gでしたが高度経済成長時代の昭和58年では3250gにまで増えています。妊婦さんはお腹の赤ちゃんの分と合わせて「二人分食べなさい」と言われたのは食べ物が豊富でなかった過去のことなのです。
 飽食時代と言われる現代では、妊婦の栄養過多による肥満から多くの産科合併症を引き起こしていることに気づかなければなりません。