―本の内容―

日本には昔から冷え性は「万病の元」の格言があります。しかし 不思議な事に西洋医学に冷え性の定義が有りません。冷え性の危険性を科学的に検証したのが、この本が最初かと思われます。第2章の冷え性を科学する(図5・図12)が私の考えです。体温が37℃で正常であっても、環境温度(寒い・暑い)によっては手足が冷たい「冷え性」・手足が温かい「熱中症」という病態が発生します。つまり、中枢体温が37℃だけでは必ずしも正常体温(恒温状態)とは言えないのです。冷え性(持続的な末梢血管収縮)が病気を、熱中症(持続的な末梢血管拡張)が突然死(SIDS・風呂場での溺死・屋内熱中症・車内熱中症)を惹起します。とりわけ出生直後の赤ちゃんが健康に育つためには快適な環境温度で恒温状態(末梢深部体温のリズミカルな変動)である事が条件です。恒温状態とは何か、この定義も曖昧です。

新生児冷え性の病名に同僚の医師・助産師たちは驚くかも知れませんが、私は新生児冷え性の概念が周産期医療で医学的常識になればと願っています。新生児冷え性と飢餓(完全母乳)で低血糖を促進します。もし、赤ちゃんが高インスリン血症児(図22)であったならば、脳に障害を遺す重度の低血糖症は確実です(図23・図44)。私は、新生児の低血糖症と重症黄疸が発達障害の原因と考えています。日本では、乳幼児突然死症候群は原因不明とされていますが、真実は、冷え性と背中合わせの熱中症がSIDSの本態(図41A・図41B)です。現代医学は持続的な末梢血管収縮(冷え性=アドレナリンON)と持続的な末梢血管拡張(熱中症=アドレナリンOFF)の危険性を見逃しています。出生直後の新生児冷え性は万病の元に間違いありません。寒い分娩室に生まれてきた赤ちゃんを保育器(34℃)に2時間収容し出生直後の冷え性を防ぐだけで、これまで生理的現象と考えられてきた初期嘔吐・チアノーゼ・低血糖などを防ぐ事が出来るからです(図1・図2・図26)。ところで、日本の少子化対策には発達障害防止策が欠如しています。発達障害の増加に歯止めを掛けなければ少子化はさらに加速します。日本の少子化対策には産科麻酔科専門医制度(図46)の導入が必要と考えます。お産に予防医学(科学)を! それが久保田式産科学のテーマです。