西日本新聞
2000年5月27日掲載記事

乳幼児突然死症候群 “着せすぎ” 注意  

 赤ちゃんが睡眠中に急死する乳幼児突然死症候群(SIDS)は、体に熱がこもる高体温化(うつ熱)に起因した例が多く、着せすぎは危険。こんな研究結果を福岡市中央区の産婦人科医院院長・久保田史郎さん(55)がまとめた。近く本として出版する。厚生省はSIDSの危険因子として、うつぶせ寝など三つを挙げているが、着せすぎは含まれておらず、久保田さんは「広く注意を促したい」と話している。
 久保田さんは 開業前の九州大学医学部付属病院在職中から約25年間、環境温度が新生児の体温に及ぼす影響を研究。着せ過ぎやうつぶせ寝で放熱を妨げられた乳幼児は「恒温状態を保つために産熱機能の低下を余儀なくされ、深い眠りについて目が覚めにくくなる」という因果関係を解明。この状態が続けば「高体温化が進んでオーバーヒート状態になり、低酸素血症を起こして無呼吸状態に陥る危険性が高い」との研究結果を導き出し、昨秋、日本産科学会福岡地方部会で発表した。
 厚生省によると詳しい原因は不明とされるSIDSは、0〜1歳児に集中。1998年に死亡した乳幼児4380人のうち360人がSIDSとされ乳児の死因の第3位に挙げられている。
 同省は’96〜’97年に全国調査を行い、危険因子として、うつ伏せ寝、親の喫煙、人工乳の3つを発表。着せ過ぎは挙げてはいないが欧米では因子の一つとされている。
 久保田さんは「乳児は熱を補うため体を動かすことは出来ても、衣類を脱ぐことはできず、寒さより暑さに弱い。発汗状態や手足の温度への注意が大切」と話している。
興味深い研究内容
元厚生省SIDS研究班班長の仁志田博司・東京女子医大教授(小児科医)の話
 厚生省の調査では「着せ過ぎ」との因果関係は確認できなかったが大学による遺族調査では、室温でなく着衣や寝具で赤ちゃんの体温を管理していた例が多かったという報告もある。興味深い研究内容であり、危険因子の一つとして注意が必要だと思う。