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■妊婦の生活習慣病と赤ちゃんの体重

 昔と違って社会環境が大きく変わった今、便秘や肥満などの生活習慣病が増え、その影響は赤ちゃんの体重にまで及び、新生児仮死・低出生体重児の原因となっています。そのために当院では、巨大児・未熟児の発生を防ぎ、より理想の安全な出産ができる様に、妊娠中の(食)生活習慣の指導や水中運動を積極的におこなっています。

□巨大児(難産)を防ぐ栄養指導
 当院の栄養指導は、巨大児(難産→新生児仮死)を防ぐのに役立っていることが分かりました。教科書では、4000g以上を巨大児と定義しています。しかし、初産婦の場合、3500g以上の赤ちゃんは難産になり易く、我国で陣痛促進剤の使用や吸引分娩、帝王切開による異常分娩が増える理由は、児の巨大化傾向が分娩を難しくしているからです。我国の3500g以上の児の発生頻度は5人に1人(約20%)ですが、当院の最近の成績では5%以下に抑えることができました。当院の帝王切開率(6%)が全国平均(12〜15%)に比べ半分以下と少ないのは、栄養指導によって難産による胎児仮死が減ったことも理由のひとつに挙げられます。欧米と違って低身長の日本人(平均:158cm)の場合、3500g以上の赤ちゃんは、臨床的には巨大児と考えて妊娠中の食生活に気をつけられた方が安全です。詳細は、当院の「安産のための食事法」をご覧ください。

□低出生体重児の危険因子(末梢血管収縮)を防ぐ水中散歩
極低出生体重児(1500g未満)の赤ちゃんは、早産・胎盤早期剥離・妊娠高血圧症候群(旧:妊娠中毒症)などの異常妊娠に多く生まれます。上記の疾患は、妊娠中の過労・睡眠不足・タバコ・運動不足などをもった妊婦さんに多く見られます。これらの生活習慣は、末梢血管を収縮させるという共通の特徴を有しています。つまり、妊娠中の誤った生活習慣を改善することによって末梢血管の収縮を防ぎ、いかに各臓器とくに子宮胎盤の血流を良くするかが低出生体重児を防ぐ秘訣なのです。とりわけ、水中散歩は全身の末梢血管収縮の予防と利尿作用に効果を発揮します。そのためか当院で水中運動を行った妊婦4000人からは、重症妊娠中毒症などによる極低出生体重児は1人も生まれていません。妊婦水泳群に重症妊娠中毒症・胎盤早期剥離が発症しなかった理由は、これらの病気を防ぐなんらかの作用が水中運動にある様です。最近、低出生体重児が増えた理由に、妊婦の栄養不足が原因と報じられたました。しかし、その原因は末梢血管収縮によって胎児に栄養が十分に行き届かない可能性の方が強いことも忘れてはならないのです。
 妊娠生活を楽しみ、体調を整え病気を防ぐ、安産効果に優れた「水中散歩」を一度お試しください。きっと、あたたかい体調の変化に気付かれることでしょう。
久保田産婦人科麻酔科医院
久保田史郎
2005年5月5日