お産と予防医学

 はじめに
 当院の特徴は、お産に「予防医学」を積極的に取り入れているところです。その理由は、我国では発達障害と診断される赤ちゃんが増え続けているからです。その発生頻度はこの10年間で約2倍、20人にひとりが発達障害児と診断されています。医学の進歩にもかかわらず、なぜ発達障害児が増えるのでしょうか。
 現代医療に予防医学は不可欠です。しかし、我国のお産の現場では、自然分娩、完全母乳哺育など自然派志向が強いため予防医学は余り普及していないのが現状です。その背景には、我国のお産事情、お産は痛くて「当たり前」、赤ちゃんは黄疸が出て「当たり前」、その「当たり前」という昔からの言い伝えが予防医学の道を妨げているのです。
 お産を科学すると、この「当たり前」と考えられている現象の中に、非生理的(危険)な現象が数多く潜んでいる事に驚かされます。例えば、赤ちゃんの黄疸は生理的な現象と教えられますが、重症黄疸が難聴などの発達障害の危険因子であることを誰も教えてくれません。それにもかかわらず重症黄疸を防ぐ工夫はほとんど見られません。新生児の体温に関する私の永年の研究から、重症黄疸は「生後数日間の極度の栄養不足」と「胎便排出の遅れ」が主原因であることが分かりました。
 分娩直後の赤ちゃんの低体温を防ぐ「体温管理法」は、新生児早期の消化管機能を高め、生後1時間目からの「超早期経口栄養法の確立」と「胎便排出の促進」に目覚ましい効果を示しました。この新しい当院の新生児管理法は治療を要する重症黄疸の発生をほぼ無くしたのみならず、「発達障害の危険因子」として最も恐しい「低血糖症」や「頭蓋内出血」の発症をも防ぐことに成功しました。予防医学の導入は過去のお産の常識を覆し、障害から赤ちゃんを守り、より健康な赤ちゃんを世に送り出すために重要な役割を果たすのです。
2005/4/1
久保田産婦人科麻酔科医院
院長 久保田史郎