メタボリック症候群やエコノミー症候群に代表される“生活習慣病”のほとんどは現代社会が作り出した病気だが、最近では妊婦の妊娠高血圧症候群や妊娠糖尿病といった生活習慣病も増えている。これらの防止策として注目を集めているのが水中散歩。この水中散歩を全国でもいち早く取り入れ、実践しているのが「久保田産婦人科麻酔科医院」の院長・久保田史郎先生だ。
「もともとは妊婦さんの運動不足を解消するために24年前から妊婦水泳を推奨していましたが、水泳だと血圧の高い方や泳げない方は諦めざるをえなかった。そこで、水中を歩くだけではどうだろうと考え自分で水中散歩をやってみると、足が温まり尿がたくさん出ることに気がついたのです」という久保田先生。それ以来、先生は妊婦に水中散歩を推奨している。実際に一九八三年の開業以来、久保田産婦人科麻酔科医院で出産した約一万千人のうち、妊婦水泳に参加した約四千人の妊婦には妊娠高血圧症(旧;重症妊娠中毒症)は出ていないという。
水中散歩の仕組みはこうだ。陸上の散歩と違い水中散歩では浮力と水圧が加わり下肢から心臓に戻る静脈還流が増加する。水中散歩で尿量が増える訳は、静脈還流の増加によって腎臓を通過する血流量が増えたためではないかと説明する。妊娠高血圧症を予防できた理由は、静脈還流の増加と利尿作用によって心臓の仕事量が減り血圧上昇を防ぐ作用が働いた(チャート参照)。
温水プールでの「水中散歩は心臓や呼吸に負担をかけることなく、頭から足までの全ての臓器の血流量を増やすことによってそれらの機能を助長させるので、妊婦さんだけでなく生活習慣病の予防と治療に、また高齢者の健康維持にも最適」と予防医学の重要性を訴える。 |