妊婦水泳体験記   (H15年10月10日出産)
 今回の妊娠、出産の10ヵ月は私と家族にとって大変充実したものであった。今、振り返ってみると妊婦水泳も散歩も私達にすばらしい時間をくれたと思っている。妊娠中の運動不足解消にと思い、もともと水の中が好きであったので妊婦水泳をやっているプールを探していた。ちょうどそのころ初めて久保田産婦人科を受診したところ待ち合い室に妊婦水泳の案内が貼っていたので、(先生の妊婦水泳の効果についてはあまり深く考えず)、すぐにスイミングスクールへ申し込み次の日からプールへ通い始めた。はじめて泳いでプールからあがると全身がずっしりと重く、心地よい疲れを味わった。プールに入る前にトイレをすませたはずなのに、すぐにトイレに行きたくなり色の薄いおしっこをたくさんした。「ホントだ。先生の言うとおりたくさんおしっこが出た。」妊婦中は大きくなった子宮により膀胱が圧迫されるため頻尿になるが1回の尿量は少なく「なんだこれだけ?」
というくらいのおしっこをちょこちょこするのであるが、泳いだ後のおしっこはたくさんでて気持ちが良かった。幸い私自身妊娠中は大きな合併症なく過ごしたが、妊婦水泳はつわりや妊娠中毒症などの合併症にも効果があるとのことである。プールで知り合った友人の一人は妊娠前期に体重が増え足の浮腫がひどくサンダルがくいこんで履けなくなっていたが水中散歩を始めて症状が解消した。毎日プールに通う彼女いわく「泳いだ後は足の指の間がすっきりする。週末で泳がない日は逆に不安になる」らしい。ひどいむくみを経験することなく快適に過ごせたのは水中散歩のおかげだと思う。「水中座禅は分娩時のいきむ時に役立つけまじめにやったがいいよ」と少し前に出産した友人に言われた。始めのうちは息がなかなか続かなかったが徐々に長く息どめができるようになっていった。呼吸法も姿勢が分娩の時と同じでイメージしやすく水の中ではリラックスできた。この呼吸法の時はおなかの赤ん坊も気持ちがよいのかいつもよく動いていた。
妊婦水泳は呼吸法、水中散歩、水中座禅などどれも実際の分娩に役にたったし、なによりも自分自身が気持ちよく妊娠期間を過ごせたと思う。そしてプールで知り合った人と何気なく情報交換をしたり、はげましあったり、その交遊は出産後もメールでやりとりしたりしながら続いている。
 妊娠36週より、水中より陸地にあがりいわゆる普通の散歩を始めた。出勤の早い夫とともにさらに早起きをし眠い目をこすりながら出かけた。始めてみるとこれも快適で、近所の川沿いを一周するのだが、季節の変化を肌で感じることができた。散歩を始めたころはひまわりが種をつけ首をなだれていたのが、出産当日は川沿いのコスモスが満開に近かった。小雨が降る朝、躊躇しながら思い切って散歩に出ると、二重の虹に出会えて得した気分になったりもした。仕事をしていた頃には味わってなかった日常をじっくりと満喫できたと思う。
 妊娠の10ヵ月はあっという間である。妊娠は病気ではないけれども、代謝も活発になり普段とは違うマイナートラブルも伴うが妊婦水泳はそれらをふきとばしてくれた。そして体を動かすことを目的で通ったが、新たな友人と出会ったりとそれ以上のものを得ることが出来た。そして今は充実した妊娠期間と分娩の後、新米ママとして育児に奮闘中である。

 以上の体験記はH15年10月10日(体育の日)に出産された小児科医 H先生の妊婦水泳体験記です。坊やの名前は拓歩君(出生体重3090g)です。
 分娩室には赤ちゃんの元気な産声が響き、大仕事を成し遂げ幸せに満ちた笑顔のお母さん、そして赤ちゃんを見つめるその目には小児科医ではなく母のやさしい眼差しを感じました。女性が最も美しく輝く瞬間、それがお産なのかもしれません。レポート有難うございました。
久保田史郎11/20/03