日経メディカル
1996年5月10日号掲載記事
カロリーは控えめで安産増加「妊娠中は一定熱量がカギ」
 妊娠全期間を通して一日のカロリーが1900Kcalとなるよう栄養指導を行うことで、出生時体重が「安産域の新生児が増加することが、10年間の調査研究で明らかになった。このデータは、久保田産婦人科医院(福岡市)院長の久保田史郎氏らが、第48回日本産婦人科学会で発表したもの。1986年から95年の10年間に同医院で満産期分娩した妊婦5083人を調査対象とした。
 久保田氏が着目したのは、胎児の体重が妊娠後期に急増、難産の引き金になること。まず、妊娠全期間にわたって一定カロリーを摂取するよう、栄養指導の見直しを行った。摂取カロリーは20歳と30歳の妊婦前半の一日摂取カロリーの平均である1900Kcalとした。また、朝食を抜くなど食生活に問題がある場合は、摂取カロリーの管理だけでなく、生活指導も併せて行った。
 その結果、新生児の平均出生時体重は3050gと、我国の平均を200g下回った。出生時体重が3500g以上の「難産域」の新生児は9%と、平均である18.3%の半分以下となった。難産の指標となる帝王切開率は、平均12%に対して、栄養指導を実施した10年間では平均6.1%にまで減少した。一方、2500g以下の未熟児の割合も4%と、平均の6%を下回り、この栄養指導によって「安産」が増加することが明らかになった。
 従来、妊婦の栄養指導は、妊婦が20歳の場合は妊娠前期に一日の摂取カロリーを1950Kcal、後期では2250Kcalとし、30歳の場合はそれぞれ、100Kcal引いたものを基準としてきた。新生児の出生時体重は、栄養状態の改善、カロリー摂取の慢性過多などにより、新生児の平均出生時体重は3250gと「安産」となる2800〜3000gより重くなった。体重が3500gを超える場合は、帝王切開や陣痛促進剤を必要とする「難産」となる場合が多い。そのため、「いかに妊娠中の体重増加を抑えるか」が栄養指導の重要課題となっている。
 久保田氏は「妊娠全期間をとおして安産域の赤ちゃんを増やせることがはっきりした。従来信じられてきた栄養指導を見直すきっかけとなれば」と話している。