SIDSの危険因子―日本と米国の違いー

■SIDS発症の危険性を低くするための留意点
厚生労働省雇用均等・児童家庭局母子保健課2006年10月31日

乳幼児突然死症候群(SIDS)とは、それまで元気だった赤ちゃんが、事故や窒息ではなく眠っている間に突然死亡してしまう病気です。発症は年々減少傾向にはありますが、平成16年においては全国で232人の赤ちゃんがこの病気で亡くなっており、1歳未満の乳児の死亡原因の第3位となっています。発症原因はまだわかっていませんが、以下に示すいくつかのことに留意することにより、この病気の発症率が低下することが研究により明らかになっています。

(1)赤ちゃんを寝かせるときは、あおむけ寝にしましょう。
うつぶせに寝かせたときの方が、あおむけ寝の場合に比べて乳幼児突然死症候群(SIDS)の発症率が高いということがわかっています。うつぶせ寝が乳幼児突然死症候群(SIDS)を引き起こすものではありませんが、医学上の理由でうつぶせ寝をすすめられている場合以外は、赤ちゃんの顔が見えるあおむけに寝かせるようにしましょう。

(2)できるだけ母乳で育てましょう。
母乳による育児が赤ちゃんにとって最適であることは良く知られています。人工乳が乳幼児突然死症候群(SIDS)を引き起こすものではありませんが、できるだけ母乳で育てるようにしましょう。

(3)妊娠中や赤ちゃんの周囲で、たばこを吸わないようにしましょう。
たばこは、乳幼児突然死症候群(SIDS)発症の大きな危険因子です。妊婦自身の喫煙はもちろんのこと、妊婦や赤ちゃんのそばでの喫煙もよくありません。妊娠したらたばこはやめましょう。


■当院のSIDS発生防止法 (久保田産婦人科麻酔科医院)

恒温動物である人間は環境温度の変化に対して、放熱量と産熱量を調節しながら体温の恒常性を維持しています。しかし、睡眠中の赤ちゃんが着せ過ぎ・暖め過ぎなどによって高体温(うつ熱)になった時、児は自己防衛反応として放熱促進(末梢血管拡張⇒発汗)と産熱抑制機構(呼吸運動抑制+筋緊張低下)を作動します。ところが、睡眠中の産熱抑制機構(呼吸運動抑制+筋弛緩)は、乳幼児の肺換気量を減少させ血中の酸素濃度を低下させます。うつ伏せ寝にSIDSが多い理由は、うつ熱時の筋弛緩作用が気道閉鎖(窒息)を起こす危険率を高めるからです。

我々大人は、靴下を脱いだり暑いフトンの中から逃げ出すことの出来ない赤ちゃんのために、安全で快適な保育環境であるかどうかの判断をしなければなりません。当院では、赤ちゃんをSIDSから守るために、下記のSIDS予防7か条を母親教室で詳しく説明しています。尚、当院のSIDS予防7ヶ条は、第8回SIDS学会(2002年2月23日)、第39回日本新生児学会(2003年7月15日)で発表しています。

SIDS予防7ヵ条
第39回日本新生児学会、2003年7月15日

(1)室内では、睡眠中の赤ちゃんに帽子、靴下、足付きロンパース、毛布など
の着せ過ぎは、放熱を妨げ、児を暖めますので注意しましょう。
(2)うつ伏せ寝は、放熱した自分の熱で腹部を暖める効果があります。着せ過ぎとの組合せはうつ熱を招き、児は汗をかき静かに眠り続けます。最も危険です。
(3)睡眠中の赤ちゃんの衣類、シーツ、フトンは吸湿性のよいものが安全です。
(4)ストーブの側やホットカーペットの上に寝かせるのは危険です。
(5)熱過ぎる人工乳は体を内側から暖めます。ミルクの温度に注意し、必ず抱いて飲ませましょう。
(6)児が静かに眠り続ける時は、着せ過ぎではないかに注意しましょう。
(7)SIDSから赤ちゃんを守るために発熱とうつ熱の違いを学習しましょう。


■米国:SIDSリスクについて再警告
NICHD Alerts Parents to Winter SIDS Risk and Updated
AAP Recommendations January 18、2006


 乳幼児突然死症候群(SIDS)で死亡する乳児の数は,寒冷期に増加する。多くの親は乳児の身体を保温するため就寝時に厚着をさせたり,余分に毛布をかけたりする傾向がある。米国立小児保健・ヒト発育研究所(NICHD)のDuane Alexander所長は,SIDSリスクを高めるため,親や養護者は睡眠時の厚着や毛布のかけすぎを避け,室温を上げすぎないように注意すべきであると、警告した。

米国小児科学会(AAP)発表
(1)昼寝を含む就寝時には,常に乳児を仰臥位で寝かせる
(2)乳児を固い床面に寝かせる(例,安全性が確認されたベビーベッド用のマットレスをぴったりしたサイズのシーツで覆う)
(3)軟らかい物体,おもちゃ,ふわふわした寝具を睡眠環境から取り除く
(4)乳児の近くで喫煙しない
(5)親の寝室にベビーベッドを置くなど,乳児と親が同じ部屋で別々に寝るようにする
(6)乳児を仰臥位にした後,乾燥した清潔なおしゃぶりを与える
(7)睡眠中の過剰な暖房を避ける
(8)SIDSリスクを減少させるという宣伝文句で販売されている商品を使用しない
(9)SIDSリスクを減少させる目的でホームモニターを使用しない
(10)斜頭症の発生を予防するため,乳児が覚醒しているときにおとなが目を離さないようにしながら腹ばいにさせる。寝かせるときには乳児の頭の向きを毎回変える。乳児を長時間,自動車のチャイルドシート,キャリア,弾力のあるバウンシングチェアなどに座らせない