1.カンガルーケア中の事故は、“低体温症” が引き金!!

近年、日本では生後30分以内のカンガルーケア中の医療事故(ケイレン・呼吸停止・脳性麻痺など)が多発している 。事故原因は不明と報道されているが、真相は日本の寒い分娩室で出生直後の体温管理(保温)を怠り、低体温症(冷え性)を長引かせた事が事故原因と考えられる。

日本では昔の産湯に代わって生後30分以内のカンガルーケアが当たり前となったが、「産湯」を止めた事は新生児管理の上で重大なミスを犯している。日本の寒い分娩室で生後30分以内のカンガルーケアは、恒温動物にとって最も危険な「低体温症⇔低血糖症」の悪循環を促進するだけでなく、肺高血圧症(呼吸障害 →低酸素血症)を合併するからである。寒い分娩室で臍帯が切断され栄養摂取が未だ出来ない赤ちゃんにとって最も注意すべき点は、カンガルーケアをいかに早く長時間するかではなく、出生直後からの体温下降をいかに防ぎ、いかに早く児を恒温状態に安定させるかが新生児管理の基本である。何故ならば、生命維持の安全を司る人間の自律神経は恒温状態でしか本来の機能を発揮する事が出来ないからである。




冬山登山(低温環境)で死亡事故が多い理由は「低体温症⇔低血糖症」に陥る危険性が高いからである。冬山登山における事故防止の3原則は、@体を温め恒温状態を保つ事、つまり体温管理(保温)が基本である。A糖分を補給する事:熱産生には糖分が大量に消費され低血糖に陥り易いからである (冬山登山にチョコレートは不可欠)、B酸素吸入;熱産生(筋肉の振るえ)には通常の数倍の酸素を必要とするからである。

低体温症の原因は、冬山登山も、寒い分娩室での生後30分以内のカンガルーケア中の低体温症も同じメカニズムである。事故防止には、先ず体温管理(保温)と糖分の補給が大事である。特に,出生直後の赤ちゃんは栄養補給が絶たれている為に、「低体温症⇔低血糖症」の悪循環には厳重な注意が必要である。恒温動物である人間が急激な低温環境に遭遇した時に最も注意すべき点は、恒温状態を保つために低体温症を如何にして防ぐかである。