5.「母乳育児を成功させるための10カ条」の第4条・第6条は、日本では
  低血糖症・重症黄疸の危険因子


第4条:母親が分娩後、30分以内に母乳を飲ませられるように援助すること、
     日本では生後30分以内のカンガルーケアを出来るだけ長時間する事
第6条:医学的な必要がないのに母乳以外のもの、水分、糖水、人工乳を与え
     ないこと、

この20年、日本では発達障害が驚異的に増加している。発達障害は遺伝性疾患と考えられているためか周産期側からの調査研究は全く行われていない。発達障害の原因解明において注目すべき点は、厚労省がWHO/UNICEFの「母乳育児を成功させるための10カ条」を後援し始めて2〜3年後から発達障害が急激に増加している事である。その増加傾向は、米国でも同様である。第4条(カンガルーケア)と第6条(完全母乳)の保育管理の中に潜む何かが発達障害の急激な増加に関連している可能性があると考えられる。



1993年、厚労省がWHO/UNICEFの「母乳育児を成功させるための10カ条」を後援したのを境に、日本のお産の常識は大きく様変わりした。我国の歴史的な「産湯」の習慣は無くなり、「生後30分以内のカンガルーケア」が当たり前となった。昔の産婆さんが経験から考え出した「産湯」は、胎内と胎外の環境温度差を少なくするために、お湯を沸かし部屋の温度を上げ低体温を防ぐのが目的であった。ところが、日本の寒い分娩室で行う生後30分以内のカンガルーケアは出生直後の体温下降を促進し恒温状態への移行を遅らせた。つまり、両者の管理法の相違点は、出生直後の「低体温」を予防したかどうかにある。

出生直後の「低体温⇔低血糖」の悪循環に、第6条(完全母乳哺育)が加わり母乳以外の糖水・人工ミルクを全く飲ませないと児は真に飢餓状態にある。何故ならば、特に初産婦では生後3日間の母乳分泌量は極少量で、基礎代謝量の半分も出ていないからである。出生から生後3〜5日間は体重が減り続け、飢餓熱が出るのは母乳が著しく不足している証拠である。日本では、新生児の黄疸は出て当たり前と考えられているが、治療を要する重症黄疸のほとんどは生後数日間の栄養不足が原因である。その根拠は、基礎代謝量に見合うカロリーを出生初日から人工ミルクで補うと治療を要する重症黄疸は出ないからである。日本で当たり前となった第4条と第6条が低体温、低血糖・低栄養・重症黄疸の赤ちゃんを増やす原因である。第4条・第6条を止めない限り、カンガルーケア中の医療事故、発達障害の増加に歯止めはかからない。




■出生直後の低血糖症は発達障害の危険因子:動物では、低血糖・低栄養・重症黄疸は小脳の神経細胞の発育を妨げることが報告されており、ヒトにおいても特に生後1週間以内の低栄養は発達障害の危険因子として注意すべきであると報告されている。
人間でも、出生直後の低血糖が発達障害の危険因子とする論文が内外から出てきていることから、出生直後の「低体温⇔低血糖」には厳重な注意を払うべきである。