温めるケアで“重症黄疸”激減!


 

 
 
 
 


 
 


 

NICU不足改善策に予防医学を
奈良、東京都における妊婦のたらい回し事件が発覚して以来、NICU不足が大きな社会問題になっている。国はNICU不足改善策としてNICUの増設を強いられているが、低出生体重児・新生児の低体温症・低血糖症、重症黄疸など、NICUに入院する赤ちゃんを減らすための工夫を見逃している。
NICU不足・妊婦のたらい回しを招いた背景には、日本の周産期医療(妊娠・分娩・新生児管理)に病気を防ぐための予防医学の概念が無い事が挙げられる。日本の周産期医療の崩壊を防ぐためには、大胆なお産改革つまり予防医学(安全対策)の導入が必要である。

先ず、カンガルーケア中の医療事故防止策・発達障害児発生防止策・NICU不足対策として、@厚労省が後援するWHO/UNICEFの「母乳育児を成功させるための10カ条」が日本で生まれる赤ちゃんに安全かどうかを検証する事、 A低出生体重児・(妊娠)高血圧症の危険因子である妊婦の「冷え性」を防ぐための生活環境を準備してあげる事、B周産期医療レベルをさらに上げるために「産科麻酔科専門医制度」を新設する事、以上の3点を提案する。


 
「温めるケア」を世界の赤ちゃんに
1. 正常成熟新生児をなぜ保育器内に収容するのか
当院では1983年の開業以来、元気に生まれてきた2500g以上の正常成熟児の赤ちゃんにも出産直後から2時間だけ保育器内(34℃⇒30℃)に収容してきました。その理由は、温かい子宮内(38℃)から生れてきた赤ちゃんの体を、分娩室の寒い環境温度(約25℃)に徐々に馴染ませるためです。プール・海水浴で冷たい水中に突然 飛び込んだら危険と、子供の時に教えられた様に、温かい環境から寒い環境に徐々に体を慣らす必要があるからです。特に、出生直後の赤ちゃんは急激な環境温度の低下に遭遇すると、児に最も危険な肺高血圧症(チアノーゼ)や消化管機能に障害(初期嘔吐)を引き起こすからです。

2. 日本の分娩室は、赤ちゃんには寒過ぎる!
空調設備の整った日本の分娩室は大人に快適ですが、赤ちゃんには寒すぎです。胎内と胎外の環境温度差、つまり寒冷刺激が強すぎると、児は末梢血管を収縮し、放熱を防ごうとします。この時、血管収縮ホルモン(エピネフリン)が分泌されますが、このエピネフリンが手足の血管を収縮させると同時に、肺血管を収縮し肺高血圧症(チアノーゼ⇒低酸素血症)を誘発します。出生直後の赤ちゃんのチアノーゼは肺高血圧症の前兆で、生理的現象ではありません。その証拠に、34℃の保育器内に収容すると呼吸循環動態は安定しチアノーゼはほとんど出ないからです。

3. 「温めるケア」を世界の赤ちゃんに!       
当院が34℃の保育器内に赤ちゃんを収容する目的は、分娩時の寒冷刺激を少なくし、胎内から胎外生活への適応障害を防ぐ為です。適応障害とは、肺高血圧症(チアノーゼ)・低血糖症・重症黄疸などです。これらは発達障害の危険因子として医学的常識ですが、日本には、それらを予防する動きは全くありません。開業以来30年間の研究で、久保田式の「温めるケア」は、肺高血圧症・低血糖症・重症黄疸の発症をほぼ完全に防止し得ることが分かりました。