発達障害の原因と予防法について |
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1.発達障害の危険因子
新生児仮死(低酸素血症)、重症黄疸、低血糖症は発達障害の危険因子として昔から知られていますが、その中で最も恐いのが「低血糖症」です。新生児仮死・重症黄疸は異常所見が肉眼的に外から見えるために早期診断と早期治療が可能です。しかし、大人と違って新生児の低血糖症は外見的な症状がでないことが多いために血糖値の検査をしなければ見過ごされることになります。糖尿病の母体から出生した児や低出生体重児あるいは早産児など低血糖の危険性がある新生児には積極的に血糖検査が行なわれますが、正常成熟新生児に対して血糖検査をする施設は一部を除きほとんど無いのが実状です。
低血糖症が恐い理由は、血糖検査が遅れ低血糖の状態が長引いた場合、脳に障害を遺す危険性があるからです。低血糖症は発達障害の危険因子であることが分っているにもかかわらず、予防法についての対策は全く進んでいません。それどころか低血糖症を促進させる保育環境が、今わが国で急速に進んでいるのです。その保育法こそが厚労省が推進運動する生後30分以内のカンガルーケアと完全母乳です。厚労省は母乳推進運動を早急に中止しなければNICUに入院する新生児、発達障害児の増加をさらに促進するでしょう。
2.新生児の低血糖症について
血中のブドウ糖は赤ちゃんの脳神経細胞の発育に唯一の栄養源です。早期新生児に低血糖症、低栄養(飢餓)状態が持続すれば、脳に永久的な障害を遺します。血糖値の低下の程度と時間がどれくらい続けば脳に後遺症を残すかは不明ですが、最近の報告では、脳の保護のためにはこの最低値が40mg/dlより低くならない様に管理することが重要であると報告されています。Cornblath(1976年)は健康成熟児の2〜3%が生後6時間までに低血糖を示し、低体温ではその頻度がさらに増すと注意を促しています。 子宮内ではお母さんの血液中のグルコースが速やかに胎盤を通過し胎児へ移行するため、お母さんに低血糖症がなければ、胎児が低血糖症になることはありません。分娩が終了し臍帯が切断された後からは、赤ちゃんの血糖値は急激に低下しますが、貯えていた肝グリコーゲンの分解(糖新生)によって低血糖を防ぎます。しかし、血糖値の推移は、分娩室の温度(寒冷刺激)、低体温、妊娠糖尿病(高インシュリン血症)、低出生体重児、新生児仮死、哺乳障害(嘔吐)、完全母乳(生後3日間、糖水・人工ミルクを飲ませない)、薬剤(抗てんかん薬:バルプロ酸ナトリウム)の服用、などに著しく左右されます。
ところで、高インシュリン血症児は妊娠糖尿病の母親からだけでなく正常妊婦からも多く生れている事が当院の調べでわかりました。生れてくるどの赤ちゃんが高インシュリン血症児であるか、その診断は出生前には不可能です。お産に立ち会う全ての医療従事者は、出生する全ての赤ちゃんが低血糖症に陥る危険性がある事を念頭におき、予期せぬ低血糖症から児を守らなければなりません。低血糖症を未然に予防する事も産科医、新生児科医、助産師に科せられた医療行為です。その低血糖を防ぐ予防策こそが、当院の出生直後の体温管理(保温)と生後1時間目からの超早期混合栄養法です。
3.低血糖症・低栄養を防ぐ当院の新生児管理法について
哺乳障害の原因の一つである出生直後の「初期嘔吐」は生理的現象として当然の様に考えられていますが、胎内(38℃)と胎外(24〜26℃)の環境温度差(約13℃)を少なくする当院の生後2時間の保温 (保育器内収容:34℃→30℃)によって初期嘔吐は姿を消しました。その結果、母乳が満足(基礎代謝量=50kcal/kg/日)に分泌するまでの生後0〜3日間の栄養不足を糖水・人工ミルクで生後1時間目から補う超早期混合栄養法が可能となり、新生児早期における発達障害の原因である低血糖症、重症黄疸(ビリルビン値20mg/dl以上)、頭蓋内出血をほぼ完全に予防し得る事が、当院で出生した 12.000人(1983〜2010年)の臨床データで明らかになりました。
発達障害(自閉症)を防ぐためには、まず出生直後の低体温症を防ぐための体温管理(保温)を行い、母乳が出にくい生後3日間の栄養不足を人工ミルクなどで補うことを勧めます。生後数日間で10%を超える体重減少は生理的体重減少ではなく、母乳分泌不足による低栄養(カロリー不足)が一番の原因です。とくに初産婦さんの場合、完全母乳にすると、ほとんどの赤ちゃんは生後0〜2日間は確実に栄養不足(飢餓)の状態です。動物実験では、生後数日間の栄養不足が脳神経の発達に害を及ぼす事が報告されています。発達障害の増加を防止するためには、出生直後の低血糖症を防ぎ、母乳が満足に出始めるまでの生後数日間の低栄養(カロリー不足)を人工ミルクなどで補う事が大事です。完全母乳栄養は母親にとっては理想かも知れませんが、生後数日間の栄養不足は赤ちゃんの脳神経発達に害あって一利無しです。
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