「カンガルーケア」と「完全母乳」で赤ちゃんが危ない!
■発刊にあたって
日本の周産期医療は世界のトップクラスと高く評価されていますが、それは未熟児医療の進歩、周産期死亡率(死産)が世界で一番少ないところからきています。では、医学が進歩したにも関わらず発達障害児が驚異的に増えているのはどこに問題があるのでしょうか。これまでの発達障害の原因と予防に関する研究は、主に生理学者、小児神経学者、精神科医、そして公衆衛生学による疫学調査を中心とした研究が広く進められてきました。しかし、最も大事な周産期医療(産科)側からの調査研究は世界でも全く行われていません。
私が、この本を出版する目的は、発達障害の解明には、お産の現場に立ち会う産科医の意見なしに原因究明はできないと判断したからです。

■周産期医療の光と影
過去、脳性麻痺の原因は、@未熟児、A仮死(低酸素血症)、B核黄疸と言われてきました。 現代産科学はこれらの疾病を確実に診断し、早期治療によって脳性麻痺を防いできました。
一方、正常分娩・正常新生児に関しても、ハイリスク群と同様の医学的根拠に基いた安全な管理が行われているかどうかが問題です。日本の周産期医療の殆どの現場では、ハイリスク群は産科医・新生児科医の管理にありますが、正常群、とくに正常新生児の管理は助産師が行うのが一般的です。つまり、正常に元気に生まれてきた赤ちゃんは産科医・新生児科医の管理を離れ、自然派志向の助産師によって体温管理・栄養管理をされているのが現状です。ところが、現代の助産師は、科学的根拠の無い「赤ちゃんは3日分の水筒と弁当」を持って生まれてくるという間違いを刷り込まれてしまいました。そのため正常に生まれた赤ちゃんには母乳以外の糖水・人工ミルクを飲ませない完全母乳が当たり前になってしまったのです。
怖い事に、出生時からの体重減少は−15%までを生理的現象と勝手に決め付け、赤ちゃんを飢餓状態に陥らせて脳に栄養障害(低血糖)を招いているのです。厚労省の「授乳と離乳の支援ガイド」が公表されて以来、日本の歴史的な「産湯」はなくなりました。産湯のかわりに出生直後のカンガルーケア(早期母子接触)を行うのが当たり前になったのです。この本は、日本の伝統的な「産湯」と「乳母」が何のために行われていたのかを解説します。 

なお、この本の内容について、平成27年3月12日に自由民主党本部 障害児者問題調査会にて講演を行った。
久保田史郎
久保田産婦人科麻酔科医院