第9章 母乳育児推進運動の悲劇

■私が異端者に見られる理由
私は産婦人科の同僚には勿論、新生児科医・助産婦さんに異端者と思われているに違いありません。理由は、新生児科医と助産師が良かれと思って進めてきた保育法(うつ伏せ寝・完全母乳・カンガルーケア)を、私は一番に大反対した張本人だからです。私が開業して間もなく、日本では新生児科医の薦めで、「うつ伏せ寝」が瞬く間に広まりました。しかし、うつ伏せ寝が日本に普及し始めた頃にはヨーロッパではすでに窒息の危険性があるとして「うつ伏せ寝」に警鐘が鳴らされていたのです。麻酔科出身の医師で窒息の危険性を百も承知していた私は先陣を切って、日本で「うつ伏せ寝」が流行る事に反対したのです。うつ伏せ寝は日本で数年間は当たり前のように行われましたが、突然死(SIDS)が増え、厚労省が広報や母子手帳などにうつぶせ寝はSIDSの危険因子と公表したために、うつ伏せ寝は何ら反省することなく、日本から姿を消したのです。次に、完全母乳哺育に反対した理由は、私は開業前の1981年に、体温調節機能不全に陥った低血糖症の赤ちゃんに出会っていたからです。そのため私は、開業前から新生児低血糖症の原因解明と予防策の研究を始めていました。日本で完全母乳が普及すると低血糖症に陥る赤ちゃんが多くなり、脳に障害を持った赤ちゃんが増える事を予測していたからです。1993年に厚労省がWHO/ユニセフの「母乳育児を成功させるための10か条」の後援活動を始めましたが、私が予測した通りに、その数年後から福岡市で原因不明の発達障害児が増え始めました。さらに、2007年に厚労省がカンガルーケアを推進したと同時に、発達障害は驚異的な勢いで増え始めました。生後3日間の完全母乳による「飢餓」と寒い分娩室におけるカンガルーケアによる「冷え性」が “低血糖症”の赤ちゃんを増やし、原因不明の脳障害(発達障害)を増やす要因となったのです。私が同僚に異端者に見られる理由は、国や学会の方針と違って、開業当初から低血糖症(発達障害)を防ぐための研究を行い、完全母乳に警鐘を鳴らしていたからです。

■ 母乳育児推進運動の落とし穴
日本では1993年以降から厚労省の後援で母乳育児推進運動が始まり、完全母乳とカンガルーケア(早期母子接触)が日本のお産の常識となりました。赤ちゃんは「3日分の水筒と弁当」を持って生まれて来るので、母乳が出ていなくても『生後3日間は、人工乳は飲ませなくてもよい』とする小児科医の科学的根拠のない俗説を、報道・助産師が国民に一斉に広めてしまったのです。驚くことに、日本周産期新生児学会・日本産婦人科医会までもがカンガルーケアは保育器に入れるより体温上昇作用が強いとザンビアの論文を引用し、日本の伝統的な『産湯』までも廃止したのです。

■「高インスリン血症」の赤ちゃんは「寒さ」と「飢え」の犠牲に
寒い分娩室(約25℃)でのカンガルーケアは低体温症を、生後3日間の完全母乳は飢餓(低栄養+脱水)を、現代産科学は日本で生まれる赤ちゃんを「寒さ」と「飢え」の犠牲にしています。『高インスリン血症児』が出生直後に「寒さ」と「飢え」に遭遇すると、新生児は『低血糖症』に陥るのは医者ならば誰にでも予測できる事です(図23)。しかし、厚労省・学会は、出生直後の「寒さ」と「飢え」は赤ちゃんを低体温症・低血糖症・重症黄疸に陥らせる事を分っていながら、母乳育児の3点セット(完全母乳+カンガルーケア+母子同室)をさらに推奨しています。いま日本では発達障害が驚異的な勢いで増えていますが、出生直後の「寒さ」と「飢え」が発達障害児を増やす一番の要因です。つまり、出生直後の「寒さ」と「飢え」を防げば、低血糖症・重症黄疸・脱水による脳の障害(発達障害)は激減すると、私は確信しています。

<低血糖症による脳性麻痺発症の事例>
高インスリン性低血糖に伴う心肺停止と診断された事例(番号 260155 2014年)についての産科医療補償制度の原因分析報告書(要約版)を紹介します。児の在胎週数は41週0日、出生体重は2600gであった。臍帯動脈血ガス分析値はpH7.29 アプガースコアは、生後1分8点 生後5分10点であった。その後、母児同室となり、児の吸啜は良好であった。生後1日、血糖値は49mg/dLであり、糖水補足が開始された。『児は眠りがちであった』。生後2日、無呼吸、顔面チアノーゼ、浅呼吸、冷感がみられ、経皮的動脈血酸素飽和度は92〜95%であり、保育器に収容された。『血糖は20mg/dLで、糖水補足、酸素投与が行われた。』

<脳性麻痺発症の原因>
新生児期に高インスリン性低血糖症による低血糖が持続し、顕性化・重症化した低血糖症による痙攣重積発作および無呼吸によりアシドーシスと高カリウム血症が惹起され、不整脈から心停止を生じ脳虚血をきたしたことと考えられる。重症低血糖症そのものによる中枢神経障害も脳性麻痺発症の原因の一つと考えられる。入院時の血液検査では 『インスリン 7μU/m』 あった。

<わが国における産科医療について検討すべき事項>
(1)学会・職能団体に対して
ア.正常新生児における血糖評価指針の策定について
正常新生児の「血糖測定」の条件や時期について指針を策定することが望まれる。
イ.高インスリン血性低血糖症と脳性麻痺発症の関連について
新生児の『一過性高インスリン血性低血糖症の病因・病態の解明』と、『脳性麻痺発症の予防法に関する研究』を促進することが望まれる。
ウ.出生体重が2500g以上で、かつ基準の10%tile以下で出生した場合の新生児の取り扱い(血糖管理および体重減少)についての管理指針を策定することが望まれる。

<原因分析報告書に対する久保田の意見>
原因分析委員会は高インスリン性低血糖症の危険性を指摘し、産科医療について検
討すべき事項として、上記(ア・イ・ウ)の管理指針を策定することが望まれると報告し
た。この指針に間違いはないが、現場の産科医に何もいかされていない。産科医療
補償制度の主な目的は「原因分析」・「再発防止」・「産科医療の質の向上」であるが、
再発防止のための対策がお産の現場で何も議論されていない。産科医療補償制度
はわが国における産科医療について検討すべき事項として学会・職能団体に対し
て、上記(ア・イ・ウ)の管理指針を検討すべきと報告したが、実際は何も検討が行わ
れていない。新生児の『一過性高インスリン血性低血糖症の病因・病態の解明』、『脳
性麻痺発症の予防法に関する研究』、『新生児の取り扱い(血糖管理および体重減
少)』についての管理指針の策定案こそが、私が1983年の開業前に設計した久保
田式新生児管理法(図26)なのです。しかし、日本産科婦人科学会などは、私が開
業以来行ってきた上記の三つの研究を握り潰そうとする動きが、実際に起こっている
のです(後述)。

■野次を飛ばす日本母乳哺育学会の助産師
出生直後のカンガルーケアと生後3日間の完全母乳は低体温症(冷え性)と飢餓の赤ちゃんを増やし低血糖症(発達障害)に陥る赤ちゃんが増える事をすでに分っていた私は、安産と予防医学の本 『The Osan』を2000年に自費出版しました。その本には、低血糖症と重症黄疸が発達障害の危険因子と書いた図表とアメリカ ヤフーに掲載されているSIDS Mechanism のシェーマを書いています。厚労省には勿論、日本母乳哺育学会などでも完全母乳とカンガルーケアは低体温症(チアノーゼ)・低血糖症・重症黄疸を増やす危険性があると何度も訴えてきました。しかし、私の提言は聞き入れて貰えず、案の定、日本では発達障害やカンガルーケア中の心肺停止事故(脳性麻痺⇒医療的ケア児)が増え始めたのです。

私は、2007年 東京で行われた日本母乳哺育学会で 「日本の分娩室は寒過ぎる」と題して、カンガルーケアの危険性を発表しました。しかし、同学会に出席していた助産師は私の発表に対して集団で大声をあげ野次を飛ばす始末です。2001年の同学会でも、同じような嫌な体験をしたことがありました。私は、第16回日本母乳哺育学会で「完全母乳栄養の抱える問題点」を発表しました。出生直後の低体温症を防ぎ、母乳が出ないときに「人工乳を飲ませると重症黄疸は激減する」と当院の新生児管理法を発表しました。ところが、会場に来ていた東京都の「赤ちゃんに優しい病院」の助産師(日赤病院)たちは、当院が「人工ミルクを飲ませた」という事を発表しただけで、講演中に大声で笑い出したのです。私の発表が終わると、今度は同病院の小児科医(部長)が立ち上がって、『人工ミルクを飲ませると重症黄疸が少ない』という一開業医の発表は信用できないと、またも嫌がらせを云う始末です。母乳育児に熱心な日赤病院(東京都)の助産師・医師から見れば、やはり私は異端者にしか見えなかったのでしょう。

■重症黄疸の発生率は分娩施設間で100倍も違う
当院の新生児管理法(保温+超早期混合栄養法)に関心を持たれた日赤病院(東京都)の助産師Aさんが当院の新生児の体温管理・栄養管理を勉強したいと、東京から当院に見学に見えました。Aさんは日赤病院(東京都)の徹底した完全母乳哺育法に疑問を持たれ、重症黄疸の赤ちゃんが多いことを危惧されていました。私はAさんに日赤病院の重症黄疸の発生率、光線療法をする頻度はどれくらいかを訊ねた所、約5人に1人(20%)位と聞き、あまりの多さに驚きました。何故ならば、当院で光線療法を必要とする重症黄疸の赤ちゃんは殆んど出ないからです。2013年、私は当院の重症黄疸の発症率(光線療法率)をしらべ、重症黄疸の原因と予防策を福岡産婦人科学会で発表しました。当院で生まれた赤ちゃんの光線療法率は10783人中22人で0,2%でした。日赤病院(20%)は当院(0,2%)に比べ、なんと約100倍も多い事が分りました。重症黄疸は難聴・発達障害の危険因子として知られていますが、それだけでなく日本一分娩数の多い日赤病院(東京都)は重症黄疸の治療費(入院費+光線療法費+その他の検査費用)だけでも、相当の収益(1日10万円)を上げている計算になります。日赤病院に重症黄疸が多くても医学的に問題にならない理由は、赤ちゃんは黄疸が出て当たり前(生理的現象)の言葉が生きているからだと思われます。同病院は「赤ちゃんに優しい病院」に認可されており徹底した完全母乳哺育で有名ですが、重症黄疸が極端に多いことから推察すると、同病院で生まれる赤ちゃんの多くは飢餓状態(低栄養+脱水)に陥っていると思われます。重症黄疸は飢餓が主な原因だからです。

■生後3日間の完全母乳哺育は児童虐待(ネグレクト)に相当
日赤病院(東京)では、母乳が全く出ていなくても人工ミルクを飲ませていませんでした。母乳が全く出ない母親に、助産師は「赤ちゃんは3日分の水筒と弁当を持って生まれてくる」、3日間は母乳が出ていなくても大丈夫、と説明していました。この情報は、日赤病院で出産された母親からのメールです。『出生時の体重は3360g、5日目(退院時)2980g、母乳は入院期間中ほとんど出ていませんでした。1ヵ月健診では3300g、体重は出生時から 60g 減っていました』のメールです。生後1ヵ月間、この赤ちゃんは飢餓状態(低栄養+脱水)に陥っていたことは紛れもない事実です。飢餓は病院側の明らかな栄養管理ミスです。子どもの『心身の発達を妨げるような著しい減食』・『適切な食事を与えない』はネグレクトと定義されています。つまり、この赤ちゃんは生まれた直後から虐待に遭っていたのです。日赤病院(東京都)に重症黄疸が多い理由は、医療側が新生児に適切(基礎代謝量)な食事(栄養+水)を与えていないからです。当院では、出生初日から基礎代謝量に相当する必要最低限の栄養(人工乳)を飲ませていますが、治療を要する重症黄疸は殆ど出ません。日本一分娩数が多い日赤病院(東京都)の医療が変わらなければ、東京都では発達障害・医療的ケア児が増え続けると予測します。とくに分娩前に診断がつかない6人に1人の高インスリン血症児が出生直後に「寒さ」と「飢え」に遭遇すると、間違いなく低血糖症の赤ちゃんが増えるからです。新生児低血糖症が怖いのは、赤ちゃんが産院で低血糖症に陥っても症状が表に出ないために、産科医・助産師が低血糖症を見逃している事です。恒温動物にとって一番怖いのが低血糖症(図3)です。重度の低血糖症は脳に障害(発達障害)を遺すだけでなく、自律神経機能を完全にストップさせ心肺停止を引き起こす危険性があるからです。私は、体温調節が出来なくなった重度の低血糖症の赤ちゃんは、体温学的には変温動物と類似した脳死状態(図4)と考えています。現代産科学には、赤ちゃんにケイレン・無呼吸発作が発生するまで “低血糖症” を未然に防ごうとする考えがありません。これでは発達障害(自閉症)・医療的ケア児の増加に歯止めを掛ける事が出来ません。

■虐待(ネグレクト)を隠ぺいする日本産婦人科医会
完全母乳を行う「赤ちゃんに優しい病院」では飢餓(低栄養+脱水)の赤ちゃんが増えています(文献12)。赤ちゃんの体重が出生時から著しく減少するのは、生後3日間は、母乳は殆んど出ていないからです。出ても、滲む程度だからです。つまり、完全母乳の赤ちゃんは、生後3日間は間違いなく飢餓状態(低栄養+脱水)に陥っています。完全母乳哺育で有名な日本赤十字病院(東京)では、生後3日間、母乳が全く出ていなくても人工ミルクを飲ませていませんでした。繰り返しになりますが、母乳が全く出ない母親に、助産師は「赤ちゃんは3日分の水筒と弁当を持って生まれてくる」、3日間は母乳が出ていなくても大丈夫、と説明していました。出生時の体重は3360g、2日目3079g、5日目(退院時)2980g、5日間で380g 減少していました。母乳は入院期間中ほとんど出ていませんでした。一ヵ月健診では3300g、体重は出生時から 60g 減っていたのです。生後一ヵ月間 この赤ちゃんが飢餓状態にあったのは間違いありません。飢餓は病院側の栄養管理ミス(虐待)であり、裁判になれば病院側の敗訴は確実です。ところが、日本産婦人科医会は赤ちゃんが入院期間中に飢餓状態にあった事を隠すための資料を最新『新生児のプライマリケア』(平成25年)に掲載していたのです。裁判になった場合、重度の体重減少(飢餓)が認められれば病院側の敗訴は確実です。そこで日本産婦人科医会(幹事)は平成25年発行の新生児のプライマリケアに 『体重増加速度は生後の体重減少で最も減った体重を起点に計算する』を発表したのです。この発表には大変驚きました。体重増加速度は生後0日から計算するのが医学的常識だからです。このケースの場合、医会の計算式では、最低体重は2980g、一ヵ月健診で3300gであることから体重増加は+320gになります。この発表は、患者(飢餓の赤ちゃんの母親)を誤魔化し、裁判を病院側に有利にするための策としか思えません。『新生児のプライマリケア』の計算式に従えば体重増加は+320g となりますが、実際の体重増加は−60gで確実に飢餓状態です。日本産婦人科医会はこれから増える事が予測される完全母乳の弊害(飢餓)を隠そうとしているとしか考えられません。また『新生児のプライマリケア』 は、出生体重に回復する時期について、完全母乳哺育法では3週間以内に回復すれば良いと発表しています(図31)。因みに、当院で生まれた赤ちゃんは生後4日目に出生体重に戻ります。この『テキスト』は、赤ちゃんを守るためではなく、赤ちゃんを飢餓に陥れた病院を裁判から守るために作成されたガイドラインと言わざるを得ません。裁判になれば、この『新生児のプライマリケア』が参考資料として裁判所に提出されます。裁判官は、児の体重発育は良くないものの、極端な飢餓ではないと判断するでしょう。日本で生まれる「完全母乳」の赤ちゃんは世界で最も「栄養状態」が悪いと思われます。厚労省は体重減少−15%までを生理的減少と考えているからです(図32)。当院の赤ちゃんの体重減少率は平均−1.2%で、5%以上体重が減る赤ちゃんはいません(図33・図34)。日本産婦人科医会のガイドライン(教科書)を見直さない限り、日本では飢餓の赤ちゃんが増え、発達障害が増え続けます。

―児童虐待(ネグレクト)を見逃す東京都―
日本の助産師は自然を重視しますが、自然には科学(予防医学)がありません。科学がない所で、医療事故が多発するのは当然です。事実、カンガルーケア中の心肺停止事故は厚労省が後援する完全母乳とカンガルーケアを積極的に行う「赤ちゃんに優しい病院 BFH」に多発している事が分かっています。その様な病院では低体温症・低血糖症・重症黄疸・飢餓に陥る赤ちゃんが増え、当然、発達障害の赤ちゃんも多いと私は考えています。東京都の「赤ちゃんに優しい病院」では治療を要する重症黄疸の赤ちゃんが極端に多いことが分っていますが、それよりもっと怖いのは、一ヵ月健診の赤ちゃんの体重が出生体重に戻っていない児がいることです。その赤ちゃんは、生まれた時からネグレクトに遭っていたのです。赤ちゃんを虐待する恐ろしい病院を厚労省は「赤ちゃんに優しい病院」としてなぜ後援するのか、東京都保健所は虐待(ネグレクト)をなぜ見逃しているのか、立ち入り検査を行うべきです。都民ファーストを掲げる東京都はBFHの医療(完全母乳+カンガルーケア)が本当に赤ちゃんファーストになっているか、病院の収入を上げるための病院ファーストになっていないかを検証すべきです。東京都が変わらなければ、日本は良くなりません。2001年頃に、私が東京都(保健所長)に安産と予防医学の本 『The Osan』を60冊送ったのは東京都の医療改革に期待していたからです。

■福岡市の発達障害児 驚異的な増加
2007年、厚労省が『授乳と離乳の支援ガイド』を発表してからカンガルーケアが急速に広まり、福岡市では発達障害児が驚異的な勢いで増えています(図21)。日本の将来を危惧した私は完全母乳とカンガルーケアに再び注意を促すために2014年11月に、『カンガルーケアと完全母乳で赤ちゃんが危ない』の本を小学館から発刊しました。その内容は、現在、日本で当たり前に行われている保育法の見直しを迫ったものです。この様に、私は開業した時から厚労省・学会・助産師会に嫌われ者になる運命にあったのです。

―私は異端者の道をなぜ選んだのか―
日本の医療の特徴は、病気の診断学と治療学が進歩した事です。しかし、病気を防ぐための予防医学は未だほとんど進んでいません。特に周産期医療の分野においては、元気に生まれた赤ちゃんが突然死や発達障害にならない為の予防医学(安全対策)は全く進んでいません。それどころか、学会が障害児を防ぐための予防医学の必要性を認めようとしないのです。私はなぜ異端者の道を選んだのか、それは私が予防医学の重要性を訴えなければ、カンガルーケア中の心肺停止事故(脳性麻痺)、事故にともなう医療的ケア児の増加、発達障害児の増加、NICU不足に歯止めが掛からず、国民医療費・福祉費はますます増え、少子化はさらに進むと危惧しているからです。一開業医の私が、厚労省・学会が推進するカンガルーケアと完全母乳に敢えて警鐘を鳴らし続けてきた理由は、発達障害の原因と予防策に関する研究を34年以上も前から周産期側から研究してきたのは国内に、国外でも私以外にいないと判断したからです。だから私はこの本を書く決心をしたのです。