第15章 皆様からのメッセージ

私の手元には、カンガルーケア中に事故に遭われた被害者の方、発達障害児のご両親、SIDSで子供さんを亡くされた方々から沢山の相談のメールが届きます。メールを頂いた方々の最後には、決まって、『カンガルーケアと完全母乳で赤ちゃんが危ない』の本を出産する前に読んでおけば事故は防げたのに・・・どのメールにも後悔の言葉が書いてあります。一方では、励ましのお便りもいただきます。小児科開業医・小学校の校長先生・保健師さんからのメール、その一部を紹介します。

*小児科医からの励ましのメール
久保田史郎先生 御侍史
先生におかれましては日々ご活躍の事とお喜び申し上げます。
はじめて筆を執ります。先生の著書:カンガルーケアを拝読させて頂きました。私は小児科医です。勤務医時代はNICU勤務をし、また外来ではアレルギー診療に携わっておりました。小児科医として20年前に開業し専ら小児アレルギー疾患、特に食物アレルギーを専門にしています。
先生の著書を拝読し新生児の看護がこんなにひどい状況にあることを初めて知りました。この本を世に出して頂いたこと心から御礼申し上げます。さっそく、待合室の掲示板に掲載しております。小児科医をしておりまして、近年、特に発達障害を持った児童が増加していることにこの国の将来を危惧致しておりました。お産がこのような危険な状況にあることを知りませんでした。安全なお産が広まって、先生が提唱されておられる育児方法が一刻も早く普及することを望んでおります。アレルギーを専門にしている立場から、発達障害児の増加には防腐剤等の添加物の影響があるのではないかと想像致しておりましたが、もっと根源的な問題があったのですね。先生のご活躍期待しております。頑張ってください。
平成26年11月30日 小島医院 小島崇嗣拝
(小島崇嗣先生のお名前は実名で、ご本人の許可をとっています。)



*小学校の校長先生からの便り
久保田史郎先生
先日の市長会ではお世話になり、また御著書まで頂きありがとうございました。さて、先生の本を読んでいるところですが読み進めているうちにとても怖くなりました。WHOが発展途上国と先進国をひっくるめて方針を出したり、科学的根拠のない情緒的思い込みが産科の現場を支配していたり、なぜ国は動かないのかと思った次第です。我々学校の教員は発達障害の子たちをいかに普通に勉強させるかに心を砕いています。根本の所をいかに正すか よろしくお願いします。
                                平成27年2月8日



*障害者施設の方から
久保田史郎先生 
私は〇〇市にある障害者施設で事務をしています。先生の著書「カンガルーケアと完全母乳で赤ちゃんが危ない」を偶然ネットで目にし、とても興味を持ち購入させて頂きました。私にも2人の子どもがおり、子どもの回り、障害者施設で働く中で障害をお持ちのお子さんが急激に増えているような気がしておりました。なぜこんなに増えているのだろうと疑問に思っていた所、先生の著書に出会い、読ませて頂く中で、とても理にかなっている事、統計グラフを見てゾッとしました。偶然の一致ではない。それと同時に、先生の仰っている事を1人でも多くの妊婦さん・ご家族・これから妊娠される方多くの方に知って欲しいと強く思いました。ご多忙な先生にこんな勝手なお願いをするのは恐縮ですが、講演会などを行って頂きたいです。そして1人でも多くの産婦人科医・妊婦さん・ご家族にこの事実を知って欲しいです。私の出来る事は本当に微力ですが、先生の本を回りの人にも伝えていきたいと思っております。先生の取り組みが少しでも多くの方に伝わり、出産の現場が改善されます事を祈っております。すばらしい本に出会えた事を感謝しております。          
平成27年1月26日


*保健師さんからのメッセージ
現在妊娠8ヶ月です。私がお産についての勉強をしたのは、看護学生の頃。もう何年も前のことになります。看護師や保健師として医療の現場で慌しく過ごしてきましたが、1人の女性として自分が妊娠を経験して思うのは、お産について「根拠に基づいた情報を正しく理解する」ということから、いつの間にか遠くかけ離れていたということでした。
私は、久保田産婦人科を受診し妊娠4ヶ月あたりから母親学級を受講しました。その時の私は、国家試験合格のためだけに暗記した曖昧な記憶と、なんとなく世の中で推奨されている情報、同僚や出産経験者との会話から得た今の流行り…どれも、なんとなくの内容でした。それでも、少しは知識や情報は得ているつもりでいました。しかし、母親学級を受講して、情報を正しく理解しないまま流されてしまっていたことに気づき愕然としました。「知らない」ことの恐ろしさを感じ、母親になろうとしている自分にも、医療者として携わってきた自分にも恥ずかしさすら覚えたものです。
その内容の1つに妊婦の冷え性が挙げられます。妊婦にとっての危険因子として「冷え性」という単語だけは思いついても、赤ちゃんにどれだけの負担を与えているか、そして想像もつかなかった生後間もない赤ちゃんの冷え性が、発達障害の増加までも招いている現状を初めて知りました。その時の衝撃と驚きは忘れられません。日本で推奨され当たり前になっているカンガルーケア法にも疑問を感じ、本当にこのままでいいのだろうかと思いました。
日本の新生児・小児医療がトップクラスにあることは、妊娠した女性にとっては心強いことです。しかし、正しい情報を得て理解し実践しながらお産に臨む妊婦が増えれば、高度医療にお世話になる前に防ぐことができることが沢山あります。久保田先生がおっしゃいました。「赤ちゃんの主治医は私(医者)ではありませんよ。お母さんです」 私は、ここで学ぶチャンスに出会わなければ今の日本のお産の現状に、何の疑問も抱くことなく過ごしてきたでしょう。「正常をより正常に」(久保田産婦人科 母親学級資料より抜粋)するために何をすべきか、妊婦はお産について学び、医療者は根拠に基づいた情報を正しく伝えていく必要があると思います。私は妊娠を経験した1人の女性として、そして医療に携わる者として、久保田産婦人科で学んだ情報を得ることができる場が、もっともっと日本中に広まって欲しいと心から思います。                                
早〇由〇 平成29年6月27日

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カンガルーケア中の心肺停止事故(脳性麻痺)、発達障害、そしてSIDSで事故に遭われたご家族からの相談のメールは、今も絶えません。この本を出す一番のきっかけは皆様の苦悩がわたしを動かしたのです。ここで紹介した励ましのお手紙はほんの一部です。有難うございました。丁度この日、平成29年6月24日に当院で予定していた全てのお産を終了しました。当院での最後のお産は帝王切開でしたが無事に終了し、今はホットしているところです。私は、この本を出すことによって、出生直後に冷え性を引き起こす寒い分娩室でのカンガルーケア(早期母子接触)と完全母乳の見直しは厚労省・学会に任せれば良いと、一開業医の出番は終わったと思うと肩の荷が嘘のように軽くなります。

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<小さな来訪者に感謝!>
平成29年6月24日(土)、外来に行くと、当院で生まれた5人兄弟がわたしを待合室で待っていました。福本麻衣さんの子供さん達です。先生、お疲れ様でしたの声に、思わず涙が出そうでした。閉院する事を知り、わざわざ “お疲れさま” を云うために来てくれたのです。H20年5月生まれの孝樹君、H21年5月生まれの由衣ちゃん、H22年7月生まれの泰介君、H24年2月生まれの和麻君、一学年おいてH25年6月生まれの隼介君の5人兄弟です。上から4人は年子で、一歳おいて5人目の隼介君です。どの子も元気いっぱいで、眼が輝いています。3人目の隼介君が生まれた時は、「これが最後です」。4人目の時も「これが最後です」。5人目の隼介君が生まれた時は、また授かったらよろしくお願いしますね。・・・・・久保田産婦人科がなくなれば、もう産みたくありません。陰部神経ブロックのお蔭で5人も産みました。麻酔を打ってもらった瞬間、先生が神様に見えました。麻酔のないお産なんて考えられません。水中散歩もなくなるのですか?・・・・・私、5人も先生に取り上げて貰ってラッキー!

いま私は、陰部神経ブロックをどうやって伝えていこうか、そればかりを考えています。何故ならば、教科書通りに陰部神経ブロックを行うと麻酔は殆んど効かないからです。教科書(Bonica)の針を刺す場所が正しくないからです。麻酔科の先生は、硬膜外麻酔は得意ですが、産道に手を入れて行う陰部神経ブロックは不得手と思われます。当院で行う陰部神経ブロックは内診に慣れた産科医にしかできない産科麻酔法です。私は、陰部神経ブロックを1万回以上も行ってきましたが、一例の事故もなく、産科医が安全に行う無痛分娩法としては本法以外にないと考えています。ついでに、私の専門とする新生児の体温管理法は勿論、陰部神経ブロック・水中散歩・冷え性対策・SIDS予防策・胎盤早期剥離/妊娠高血圧症の予防策など,いままでのお産の常識とは異なる教科書には書かれていない久保田式産科学をこれからも発信していきたいと考えています。