第16章 終わりに

私は、本年2017年7月末をもって、久保田産婦人科麻酔科医院を閉院しますが、この本を出版するに当たって最後に申し上げたい事は、私の34年間の研究が無駄にならない様にして頂きたいことです。昔、厚労省が「うつ伏せ寝」を見直し、「仰向け寝」運動を始めたのと同様に、カンガルーケアを見直し、出生直後の低体温症を防ぐための予防医学(温めるケア)を取り入れて欲しいと願う気持ちで一杯です。赤ちゃんの冷え性を防ぐための体温管理(保温)と母乳が出ない時期の飢餓を防ぐ予防医学を導入するだけで発達障害は必ず減り始めると信じています。発達障害児防止策、少子化対策、国民医療費削減策は、妊婦と赤ちゃんの冷え性対策なしでは、それらの解決はできません。

この本に書いたSIDSと発達障害の原因と予防策(図44・図45)は、全て、関連の学会や講演会で発表したものです。但し、「新生児冷え性」については医学事典および教科書にも定義、病名、診断名もありません。新生児冷え性の概念は、これからの新生児学の重要な研究課題として、敢えて名前を新生児冷え性としました。私は、出生直後の新生児冷え性を防ぐための予防医学が普及した時に、日本のお産が「赤ちゃんファースト」に生まれ変わる時と考えています。新生児冷え性と飢餓を防ぐ久保田式の新生児管理法(図26)が、日本の少子化対策(図46)・国民医療費削減策(図47)の目玉となり、日本のお産の常識になる事をただ祈るばかりです。

34年間、私を支えてくれた当院の全てのスタッフに感謝します。異端者を見捨てないで、苦労を共にしてくれた妻 敦子には 最高級の“有難う”の感謝状を贈ります。
閉院後は、私の出身地の佐賀市富士町にある株式会社 風(かぜ)に「水と健康科学研究所」を立ち上げ、執筆活動を含めて、これからも予防医学の重要性を世の中に発信していく予定です。日本のお産の常識を変えるために、この本を一人でも多くの方に読んで欲しいと希望します。おもて表紙の当院玄関の “虹” は、私が開業して間もなく、偶然にカメラに収めた本物の虹です。私にとってこの虹は、当院で出産された方々の思い出がぎっしり詰まった記念の一枚です。

平成29年8月31日
久保田産婦人科麻酔科医院
院長 久保田史郎