■ 当院での出産直後の赤ちゃんの管理と哺育法
 当院の通常のお産では、出産直後の赤ちゃんは鼻や口の中と胃内の羊水を吸引され、臍帯を切断されます。その後は1〜2分間、インファント・ウオーマーの上で胃内の羊水などを再度吸引され体についた羊水や血液を簡単に拭われ、できるだけ早くあらかじめ32℃〜34℃に暖めておいた保育器に裸のまま収容されます。裸のままの方が赤ちゃんの観察に都合が良いのです。その際必要であれば適量の酸素が流されます。保育器はお母さんのすぐ横に置き、赤ちゃんを手でさわることもできます。赤ちゃんに必要な処置がある時やお母さんに処置や安静の必要がある時以外は、お母さんから赤ちゃんを引き離すことはありません。
 保育器は、温度管理だけではなく低酸素血症の防止低血糖症の防止にも有効です。低酸素血症は分娩中から出産直後に発症しますが、低血糖症は出産後1時間目前後から多く発症します。当院の赤ちゃんの環境温度管理は保育器を用いて行うため、保育器内に酸素を流し、分娩直後から適切な量の酸素を赤ちゃんに与えることができます。また、保温によって赤ちゃんの消化機能を保持することができるようになったため、出生後1時間目にビタミンK2シロップと5%糖水20〜40mlを飲ませることができるようになりました。初期嘔吐はありません。その後は、赤ちゃんの体重に合わせて、母乳分泌が十分となるまで人工乳の適量を追加します(超早期経口栄養法)。当院では保温と超早期経口栄養法によって低血糖症は一例も発症していません。また、胎児の便(胎便)は黄疸のもとになるビリルビンを多く含み、長い間赤ちゃんの腸の中にあると、ビリルビンが再吸収され黄疸がより強くなったり、まれに赤ちゃんの腸閉塞を起こしたりしますが、早期経口栄養によっての胎便排出時間が短縮され(下図)、重症黄疸はさらに少なくなりました。また消化管の虚血が主な原因とされる壊死性腸炎の防止にも役立つ可能性もあります。保育器の欠点としては、場所をとること/分娩を予測した早めのウオームアップが必要なこと/保育器内の温度の上昇し過ぎに注意が必要なこと、ぐらいでしょうか。また、超早期経口栄養法の欠点は多少の費用(ミルク代)がかかることです。
 当院の保育器による体温管理と超早期栄養法の長所(利点)は、完全母乳栄養の短所(欠点)を十分にカバーしていると思われます。
初回胎便・移行便・乳便の排泄時間
N=47:久保田産婦人科