(3)当院での退院後の赤ちゃんの栄養指導
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厚生省の「乳幼児身体発育調査(1990年)」では、生後1ヵ月健診の調査の結果、母乳のみ(完全母乳栄養児)の比率は44%、混合栄養43%、人工栄養13%でした。当院の1986〜95年(10年間、4,571例)の1ヵ月健診時における母乳/人工乳の比率は、母乳のみ19.8%、ほとんど母乳23.3%、混合38.5%、ほとんど人工乳13.2%、人工乳のみ5.2%でした。またどの群の赤ちゃんも、一日平均で約40g/日の体重増加がありました。わが国では約5%(約20人の母親に1人)が母乳が全く出ないために人工乳に頼っている(真性母乳分泌不全)とされており、当院の調査と一致しています。厚生省発表の人工栄養13.1%は、当院の5%より多いことから、当院の「ほとんど人工乳」のグル−プを加えた数値と近い結果です。また、当院の「母乳のみ」は19.8%、「ほとんど母乳」は23.3%で、両者の合計が43.1%になることから、厚生省調べの完全母乳率44%は1〜2割の人工乳を足した値と近い結果でした。この結果から、「人工乳のみ」の5.2%、「ほとんど人工乳」の13.2%、「混合」の38.5%、合計56%の赤ちゃんは、母乳栄養のみでは栄養不足となることが懸念され、無理に完全母乳にすると体重増加不良はもちろんのこと、重症黄疸やビタミンK欠乏性出血症をはじめとする種々の栄養障害や発育障害を引き起こす可能性が高くなると思われます。当院でも母乳育児を推進し積極的に乳房マッサージにも取り組んでいます。しかし完全母乳を無理に奨めたりはしてません。赤ちゃんがほしがるだけ飲ませるように、と指導しています。当院の母乳/人工乳の比は、母乳の不足分に対して赤ちゃん自身が本能的に決めた人工乳の追加の量なのです。母乳率の違いによる5つの群の赤ちゃんの生後一ヶ月目の体重増加はいずれも1日平均40g前後であることから、人工乳を飲むことによって、赤ちゃんはそれぞれの栄養不足を見事にカバーしていることが読み取れます。 |
哺乳動物にとって母乳栄養が理想であることは誰もが認めるところです。しかし、現実問題として約4〜5割の産婦さんは母乳分泌量が不足しており、その不足カロリー分をいかに補うかが母乳哺育の問題点なのではないでしょうか。赤ちゃんの健全な発育とお母さんの精神的/肉体的ゆとりを考えた哺育法こそが、やさしい自然な哺育法と思うのです。 |
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一ヶ月健診における栄養法の違いによる体重増加の比較
久保田産婦人科(1986〜1995)
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母乳:人工乳 |
症例数 |
体重増加
(平均値±標準偏差) |
母乳のみ |
10:0 |
906(19.8%) |
40.2±9.5 |
ほとんど母乳 |
9:1
8:2 |
1064(23.3%) |
39.4±8.5 |
混合乳 |
7:3
6:4
5:5
4:6
3:7 |
1759(38.5%) |
40.0±8.9 |
ほとんど人工乳 |
2:8 |
603(13.2%) |
37.8±8.9 |
人工乳のみ |
1:9 |
239(5.2%) |
40.2±9.0 |
全体(平均) |
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4571(名) |
39.7±8.9(g/day) |
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