お産の経過と産痛  
 陣痛開始(10分毎の子宮収縮)から子宮口全開大までを分娩第1期、子宮口全開大より児娩出までを分娩第2期といいます。
 分娩進行に伴う"産痛"〈痛みの曲線〉を下図に示していますが、この痛みの程度は1期と2期では大きな違いがあります。
 分娩第1期の痛みはまだ我慢可能な生理的範囲内の痛みであるといえます。2期になるとその痛みは次第に増強し過呼吸などの異常(低炭酸ガス血症)を招き、麻酔なしでは我慢できない"病的な痛み"となることが多いのです。
 お産の痛みは、分娩進行とともに下腹痛から腰痛へ、さらに分娩第2期では産道から会陰部(肛門)へと疼痛範囲は広がり、痛みの程度も次第に増強します。
 
潜伏期の痛み: 分娩第1期の潜伏期は、全分娩経過の約2/3(8〜10時間)をしめ、時間をかけて子宮口を徐々に柔らかく、薄くします。それは子宮口開大のための準備期間であるといえましょう。この際の痛みは子宮収縮に伴う下腹痛が主で、産婦はまだ自由に歩行や食事ができる程度の痛みです。
活動期の痛み:  分娩第1期の活動期は、子宮口を急速に開大させ、児頭(先進部)が産道の方へ下降し始める時期です。この時期では子宮収縮による子宮口開大・子宮下部への圧迫・伸展による下腹痛と腰痛が主で、陣痛がない時には、痛みはそれほど感じません。しかし、陣痛発作時には、歩行や食事が困難となり、さらに児頭の下降が進めば、痛みは増強し、全身に汗が出たり、痛みのために声を発するようになります。陣痛がない時には痛みは無くなり、精神的にもまだ余裕もあり会話も普通に交せますので、まだ我慢できる範囲内の痛みと言えましょう。
娩出期の痛み:  分娩第2期の娩出期では子宮収縮はさらに強くなり、児頭は回旋しながら軟産道(膣腔)へと下降してきます。分娩第1期の痛み(下腹痛及び腰痛)に加えて、産道への圧迫・伸展による疼痛が加わり、陣痛発作時には"過呼吸"を招くほどの我慢できない痛みとなり、会話が出来なくなるだけでなく、稀に興奮状態となり、自制不能に陥る事もあります。さらに過呼吸が進めば産婦は低炭酸ガス血症となって、末梢血管は収縮し、そのために子宮血流量の低下による胎児低酸素血症(胎児仮死)を招くこともしばしば経験されます。
分娩第2期の娩出直前:  児頭が見え隠れする排臨・発露時期においては、自然に"いきみ"がかかり、痛みはピークになります。まだ硬くて狭い会陰部、そして肛門筋を保護するためにも、出来るだけゆっくり会陰部を柔らかく伸展させて児娩出を行うのが一般的です。 お産は最後が一番痛い! まさにこの時期です。
 娩出期の産道・会陰部の"痛みと筋緊張"をどうしたら緩和することができるか、どの無痛分娩法を選択した方がより安全で効果的か。そのためには、無痛分娩の方法、その長所、短所を知っておかれた方が安全です。