硬膜外麻酔の特徴
 硬膜外腔にチューブを挿入し局麻剤を注入する方法で、今日、無痛分娩法として一番理に適った産科麻酔法として一般にも知られてきました。アメリカ・フランスでは、ほとんどの無痛分娩が本法によって行われていますが、麻酔医の少ない我国では本法の手技や管理が難しいため、一部の施設で行われているだけです。硬膜外麻酔の効果や副作用は、局麻剤の量や濃度そして麻酔範囲によって決まりますが、それ以上に、術者の経験(テクニック)は効果や副作用に影響を及ぼす事が多いのです。
硬膜外麻酔法の長所:
1 意識がある。
2 分娩1期から2期まで長時間にわたって痛みをとることが可能。
3 心疾患や、妊娠中毒症など高血圧を合併した産婦の分娩管理・治療に有効。
短所:
1 手技が難しい。
2 麻酔領域の血管拡張と筋弛緩作用のため血圧下降と微弱陣痛が起こりやすい。
3 微弱陣痛に対して陣痛促進剤を使用する頻度が高くなる。
4 血圧低下などに備えて、胎児心拍モニターなどの濃厚な麻酔, 分娩管理が必要となる。そのために原則として医師は産婦の側から離れることが出来ない。
5 麻酔医が少ない我国では、お産が時間外に多いことから昼間の計画分娩にするケースが多くなる。
6 吸引分娩や、帝王切開になる可能性が増えると報告されている。
7 アメリカでは、専門の麻酔医によって本法が行われているが、麻酔医の少ない我国ではそのほとんどを産科医が行っている。手技の上手・下手はともかく、麻酔による合併症の怖さをどれだけ知って行っているかどうかが、麻酔事故を未然に防げるかどうかに大きく左右します。
 以上より、硬膜外麻酔は理にかなった無痛分娩法であることには間違いありませんが、我国で普及しないのは本法の短所の中の麻酔医が少ない、手技が難しいことがあげられます