高体温(発熱・うつ熱)の原因と体温調節のメカニズム |
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高体温は、その発症メカニズムの違いによって、“うつ熱”と“発熱”の二つに大別されます。”うつ熱“の原因は病気によるものでなく、高温環境や放熱機構(冷却装置)のトラブル、すなわち、外部環境の異常によって生じます。 |
体内の熱は輻射・対流・伝導・蒸散という4つのメカニズムによって体外へ放熱され、体温を恒常に保つための体温調節機構が作動します。しかし、体外環境が高温・多湿・無風という環境下においては、放熱機構は効率が悪くなり、高体温(うつ熱)を招くことになります。このような環境下では末梢深部体温は上昇(放熱促進)するため、手、足は温かく汗をかいていることが多いのです。また、高温環境におかれた、うつ熱状態の赤ちゃんは体温を恒常に保つために睡眠・体動減少・筋緊張低下という基礎代謝を少なくするための行動つまり熱産生を抑制しようとします。うつ熱による高体温の赤ちゃんの治療は、先ず服を脱がせ、涼しい風のある環境に移してあげることです。
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発熱(病気による) |
うつ熱(外的環境因子による) |
原 因 |
病気(感染症など) |
● 衣服(帽子・靴下・フトンの着せすぎ)等 |
● 高温環境(保育器や車の中、暖房器具の側) |
● うつ伏せ寝(SIDSの危険因子) |
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中枢深部体温 |
↑ (高体温) |
↑ (高体温) |
末梢深部体温 |
↓ (放熱抑制) |
↑ (放熱促進) |
産熱機構 |
産熱亢進(筋緊張↑) |
産熱抑制(睡眠+筋緊張低下) |
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<発熱時> |
⇔ |
<解熱時> |
冷たい |
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暖かい |
無し |
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有り |
無し |
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有り |
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呼吸抑制 |
無し |
有り |
治療 |
● 原疾患の治療(抗生物質など) |
● 睡眠 (血管拡張+筋緊張低下) |
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● 衣服(帽子、靴下等)やフトンをぬがせ、冷やす |
● 涼しい、風のあるところへ移す |
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一方、感染症などに見られる発熱による高体温は、体内における熱産生の著しい増加と末梢血管収縮による放熱機構の抑制によって発症します。しかし、高熱であるにもかかわらず、“寒さ”を感じ“フルエ”を経験するのは、体温調節中枢が発熱物質などによって錯誤的に高い水準にセットされ、あたかも低温環境下に置かれた場合と同様の体温調節機構を営むからです。熱産生促進には“フルエ”に見られるような筋緊張亢進と体動の増加が特徴的です。同時に放熱機構が抑制(末梢血管収縮)され、血流量が減少するために、末梢の手、足は冷たく発汗は認められません。発熱による高体温の治療は、感染症の原因を取り除くとともに筋緊張を和らげ(産熱低下)末梢血管を拡張(放熱増加)させるような薬剤、例えば睡眠薬として使用するような精神安定剤が効果的です。発汗は末梢血管が拡張し、症状が緩解し始める時期に認められるのが一般的です。高体温(発熱・うつ熱)の原因、症状、治療の特徴を上の表に示していますが、発熱とうつ熱では同じ高体温であるにもかかわらず、体温調節機構そして治療法などにおいて根本的な違いがみられるのです。 |
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