我国で無痛分娩が普及しないのは何故か?   
多くの妊婦さんは"痛くないお産"を希望されています。
我国で無痛分娩が普及しないのは何故でしょう!
【妊婦側】
無痛分娩に関する一般向けの雑誌(情報)が少ないために、麻酔は恐い(危険)という先入観が先行し、産科麻酔抵抗を感じている人が多い。
無痛分娩をすると赤ちゃんに悪い感じがする。
お産の痛みから逃れると、他人から弱虫といわれる。
無痛分娩は痛みを取るだけでなく、産道の筋肉を弛緩させ安産効果に優れている等、麻酔の長所が殆ど知られていない。
【医師側】
お産は自然分娩がベストと考えられており、この潮流のなかで無痛分娩がしにくい。
お産に異常が生じたときに無痛分娩のせいにされるのではないかと消極的。
お産は24時間態勢なので、麻酔管理のための人手不足・麻酔医の確保が困難。
【助産師側】
助産師の多くは、お産は自然がベストと考えており、痛みを取る無痛分娩に批判的である。
産科麻酔がどんなものかを知らない人が多い。
 殆どの妊婦さんは、少しでも楽な“痛くないお産”を希望されています。そこで、当院を受診された初産婦さんを対象に、無痛分娩を実際に希望されるか否かについてのアンケート調査をしました。ところが、無痛分娩を希望すると答えた人は144人中32人(22%)と少数でした。その後、母親教室において無痛分娩の方法、その特徴(長所・短所)などを詳しく説明した後に、当院で行っている陰部神経ブロックを紹介したところ、下図に示した様に未定の100名(70%)はもちろん、希望しないと答えた12名(8%)の全ての妊婦さんも無痛分娩を希望されたのです。
無痛分娩希望アンケート
(久保田産婦人科 1997年)
   希望する 希望しない  未定
初診時 32名(22%) 12名(8%) 100名(70%)
母親教室後 144名(100%) 0名 0名

 無痛分娩に関する情報(知識)不足が、我国の産科麻酔の普及にブレーキをかけていたことがアンケート調査結果でわかりました。また我国では自然分娩の長所だけが強調されるあまり、無痛分娩がお産の人工的介入として受け止められ、産科麻酔に批判的な医療従事者が多いのも麻酔が普及しない理由のひとつと考えられます。