無痛分娩の種類
■硬膜外麻酔法
 産婦の背中(硬膜外腔)にチューブを挿入し局麻剤を注入する方法です。アメリカ・フランスでは、ほとんどのお産が麻酔医によって硬膜外麻酔が行われています。しかし、麻酔医が少ない我国では本法の手技や管理が難しいため、一部の施設で行われているだけです。硬膜外麻酔の効果や副作用は、局麻剤の量や麻酔範囲によって左右されますが、それ以上に、術者の経験(テクニック)は麻酔効果や合併症(事故)に大きく影響するのです。
長所:
意識がある。
分娩第1期から2期まで、長時間にわたって痛みをとることが可能。
心疾患、妊娠中毒症など高血圧を合併した産婦の分娩管理に有効。
短所:
手技が難しい。
麻酔領域の血管拡張と筋弛緩作用のため血圧下降と微弱陣痛が起こりやすい。
微弱陣痛に対して陣痛促進剤を使用する頻度が高くなる。
血圧低下などに備えて、胎児心拍モニターなどの濃厚な麻酔, 分娩管理が必要となる。そのために原則として医師は産婦の側から離れることが出来ない。
麻酔医が少ない我国では、お産が時間外に多いことから昼間の計画分娩にするケースが多くなる。
吸引分娩や、帝王切開になる可能性が増えると報告されている。
アメリカでは、麻酔専門医によって本法が行われているが、麻酔医の少ない我国では、そのほとんどを産科医が行っている。
 硬膜外麻酔は理にかなった産科麻酔法であることに違いありません。我国で本法が普及しない理由は、麻酔医が少ないこと、手技が難しいこと、計画分娩になりやすいこと、等がその理由に挙げられます。