肥満、低身長、予定日超過の妊婦さんは帝王切開になり易い

 わが国の帝王切開率は施設によっても多少異なりますが、その頻度は10〜20%前後、アメリカでは30%前後と言われております。わが国でも、肥満などの生活習慣病の増加とともに帝切率が次第に増加傾向にあります。どんな妊婦さんが帝王切開になり易いかについて、(1)妊婦の肥満度、(2)身長、(3)分娩週数(予定日超過)について調べました。
■妊婦の肥満度(妊娠初期)と帝王切開率との関係を調べたところ、太った妊婦さんほど帝王切開になる率は高いことが分かりました(図6)。特に、病的肥満群は体重増加を平均3.7Kgに抑えたにもかかわらず、帝切率は9.3%と最も多くなりました 。当院では、その(病的)肥満群に対し栄養指導に加え、体力アップを目的に妊婦水泳の参加を積極的に行ない目覚ましい臨床効果をあげています。


■ 低身長の妊婦さんは帝王切開になり易いことが一般に知られています。妊婦の身長と帝王切開率について調べました(図7)。お母さんの身長が高くなるにつれて赤ちゃんの体重が増加しています。しかし、低身長の妊婦さんは赤ちゃんが小さいにもかかわらず帝王切開率が高いことが分かりました。即ち、低身長で太った妊婦さんほど、赤ちゃんが太り過ぎないような栄養法指導が必要と思われました。

■ 予定日超過の妊婦さんは帝王切開になる頻度が著しく高くなります(図8)。近年、陣痛促進剤による子宮破裂などの医療事故が増加していると報道されています。産科医がなぜ陣痛促進剤を使用するのか、その理由を妊婦さんや家族の皆様も是非、知ってもらいたいと思います。胎児は子宮内で胎盤(母親)から栄養をもらいながら発育していますが、胎盤にもヒトと同様に寿命があり予定日を過ぎると胎盤は老化現象を起こします。その証拠に、胎児は妊娠8〜9ヶ月頃より急速に体重が増えますが、予定日を過ぎた頃から発育速度にブレーキがかかり、胎児はあまり大きくなりません (図9)。その理由は、予定日を過ぎると胎盤機能は次第に衰え、胎児に十分な栄養がいかなくなるからです。
特に、分娩時つまり陣痛発作時には十分な酸素が胎児にいきにくくなるため、胎児は酸素不足の状態に陥り帝王切開を増やす原因をつくっているのです。産科医は予定日超過(帝王切開)にならない為の工夫をします。その工夫が陣痛促進剤を用いた計画分娩なのです。


 予定日超過になりやすい妊婦さんの特徴は、肥満で朝寝坊の妊婦さんに多いようです。陣痛は横になって静かに待っていても起こりにくく、また強くなりません。10ヶ月になったら早寝早起きに心掛けて、掃除や散歩などで体を動かしましょう。自然の陣痛は早朝に始まることが多く、朝寝坊していたら陣痛がおさまってしまうのです。早寝早起き、朝8時までの早朝散歩が予定日超過を防ぐコツです。