平成24年6月14日
厚生労働省 雇用均等・児童家庭局・母子保健課長
泉 陽子様
久保田産婦人科麻酔科医院
院長 久保田史郎
福岡市中央区平尾2丁目12−18

―産科医療崩壊の阻止について―
 
 少子化、国民医療費の増加、NICU不足、カンガルーケア中の医療事故、発達障害児の増加、産科医麻酔科医不足、助産師不足などの対策として、周産期医療に予防医学の導入を提案させて頂きます。

国民医療費は毎年1兆円増え続け、2009年の34兆円が2025年には65兆円になると厚労省が予測しています。高齢化社会、生活習慣病(冷え性)の増加、医学の進歩に伴う高度先端医療費などが医療費増加の主な理由です。病気(患者)の増加は国民医療費の増加のみならず医師不足を招きました。医療費抑制策、医師不足対策には、先ず国民が病気にならないための政策が第一です。

日本の医療の特徴は、病気の診断学と治療学が進歩した事です。しかし、病気を防ぐための予防医学は未だほとんど進んでいません。特に周産期医療の分野においては、妊婦や新生児が病気にならない為の予防医学は全く進んでいません。国は予防医学の研究・普及に目を向けなければ、NICU不足、カンガルーケア中の医療事故、発達障害児の増加に歯止めが掛からず、国民医療費・福祉費はますます増え、税収は減り、医療にとどまらず日本経済の崩壊が始まります。

東京都における妊婦のたらい回し事件が発覚して以来、NICU不足が大きな社会問題になりました。国はNICU不足改善策としてNICUの増設を強いられていますが、低出生体重児・新生児の重症黄疸など、NICUに入院する赤ちゃんを減らすための工夫を見逃しています。NICU不足・妊婦のたらい回しを招いた背景には、日本の周産期医療(妊娠・分娩・新生児管理)に病気を防ぐための予防医学の概念が無い事が挙げられます。日本の周産期医療の崩壊を防ぐためには、大胆なお産改革が必要です。

先ず、NICU不足対策・カンガルーケア中の医療事故防止策・発達障害児発生防止策として、@厚労省が後援するWHO/UNICEFの「母乳育児を成功させるための10カ条」が日本で生まれる赤ちゃんに安全かどうかを検証する事、A低出生体重児・(妊娠)高血圧症の危険因子である妊婦の「冷え性」を防ぐための生活環境を準備してあげる事、B周産期医療レベルをさらに上げるために「産科麻酔科専門医制度」を新設する事、以上の3点を提案します。

日本の周産期医療の崩壊がさらに進むか、改善するかの鍵は、国民の健康と命を守る厚労省が周産期医療に予防医学を取り入れるかどうかに掛かっています。

私は1983年の開業以来、周産期医療に予防医学を取り入れて参りました。日本のお産の常識(自然)とは異なった予防医学(科学)を導入した事によって、発達障害・脳性麻痺の原因である早期新生児の低血糖症・重症黄疸・頭蓋内出血の発症をほぼ完全に予防する事に成功しました。また、妊婦の脳出血や低出生体重児の危険因子である妊娠高血圧症の原因が妊婦の「冷え性」と深く関っている事が分りました。日本が抱える社会問題、国民医療費の増加NICU不足発達障害児の増加少子化対策の一環として、科学的根拠に元づいた予防医学を周産期医療に導入される事を提案します。

 以上