少子化対策の前に、発達障害児防止策を!
―発達障害(自閉症)の原因と予防策―

発達障害(自閉症)は、WHO/ユニセフが母乳推進運動をスタートして数年後から世界で増え始めた。米国では1975年、日本では1993年に、また福岡市では、出生直後のカンガルーケア(早期母子接触)が普及しはじめた時期(2007年)に一致して発達障害児が驚異的に増加した。

世界に発達障害の原因解明に関する研究は多いが、予防策についての報告はない。そこで私は、発達障害は正常成熟新生児(2500g以上)に増加し、低出生体重児(2500g以下)には増えていないことに着目した。低出生体重児は出生直後から温かい保育器に入れ、低血糖・飢餓(低栄養+脱水)を防ぐために基礎代謝量(50Kcal/kg/day)に相当するカロリー・水を経静脈的に点滴をする。しかし、正常成熟新生児に対しては、厚労省が母乳育児の3点セット(完全母乳+カンガルーケア+母子同室)を推奨したために出生直後の体温管理(保温)と栄養管理(低血糖・飢餓の予防)が疎かになった。私は、正常成熟新生児および低出生体重児に対する新生児管理法の違いの中に発達障害の原因と予防策が潜んでいると考えた。その他、発達障害児は重症黄疸で治療した新生児に高頻度に見られる事、肥満妊婦・男児・双子・帝王切開で生まれた赤ちゃんに自閉症児が生まれる確率が高い事にも注目した。





★ 1981年 久保田は体温調節機能不全に陥った低血糖症の1例に遭遇した。これを契機に発達障害の研究を始めた。日本でWHOの「完全母乳」が始まると飢餓(低血糖・重症黄疸)で 発達障害が増えると予測していた。1983年 福岡市に産婦人科医院を開業、直ちに妊婦の肥満防止を目的に栄養指導と妊婦水泳を始めた。理由は、発達障害の原因は新生児低血糖症(高インスリン血症)を疑っていたからである。国連は、WHOの「母乳育児を成功させるための10カ条」に警鐘を鳴らさなければ発達障害は増え続ける。先進国で少子化が進むのは発達障害の増加が主因である。発達障害を防がない限り少子化に歯止めが効かない。
医学博士 産科麻酔医 久保田史郎 SDGs 国際予防医学研究会(代表)










■現代産科学の “落とし穴” とは
日本の周産期医療は世界のトップクラスと言われるが、出生直後の正常成熟新生児に対する新生児管理は二流以下である。医療が進んだのは異常妊娠・異常分娩に対する管理、未熟児医療や先天的な心臓病などに対する外科的医療が進んだ事である。しかし、現代産科学は出生直後の正常新生児に対して、新生児管理の基本である体温管理・栄養管理を怠り、低体温・低血糖・飢餓(低栄養+脱水)・重症黄疸に陥らせている。この事が、日本で発達障害児が驚異的に増えた一番の要因である。NICUで管理された低出生体重児に発達障害児は増えていない。NICUでは体温管理(低体温の予防)・栄養管理(低血糖の予防)が厳重に行われるからである。つまり、正常成熟新生児に体温管理と栄養管理を低出生体重児の管理と同様に行えば発達障害は予防できるのである。発達障害は厚労省・学会の行き過ぎた母乳育児(カンガルーケア+完全母乳+母子同室)が引き起こしている。発達障害は遺伝性疾患ではない。

■厚労省の母乳促進運動が日本の “お産の常識” を変えた
1993年、厚労省がWHOの「母乳育児を成功させるための10カ条」を後援したのを契機に、日本のお産は様変わりした。歴史的な「産湯」の習慣は無くなり、出生直後からのカンガルーケアが当たり前となった。栄養面においても、母乳以外の糖水・人工乳を与えない完全母乳の分娩施設が「赤ちゃんに優しい病院」と認定される様になった。厚労省が完全母乳哺育を推進する以前は、母乳が出始めるまでの生後数日間、糖水・人工乳を足すのが当然であった。ところが、WHOの「医学的な必要がないのに母乳以外のもの、糖水、人工乳を与えないこと」が浸透するにつれて人工乳を飲ませない分娩施設(助産師)が急激に増えた。現代産科学は早期新生児の低体温症・低血糖症・飢餓を防ぐための新生児管理を怠っている。カンガルーケアと完全母乳を中止しない限り、発達障害は増え続ける (久保田)。 



























ー産科医必読ー

★帝王切開における術前及び術中の輸液(糖分)の注意点


旭川医科大学麻酔科講座HPリンク














これまで発達障害の原因は、主に遺伝病説、ワクチン説などが報告されてきたが確証はなく、現在では否定的である。近年、早期新生児の低血糖症・重症黄疸・高Na血症性脱水が発達障害の危険因子とする報告が目立って増えてきた。しかし、世界の産科学に、それらの危険因子を防ごうとする考えはない。そこで、低出生体重児に行う体温管理(低体温の予防)と栄養管理(低血糖・飢餓の予防)を正常成熟新生児に応用した時に、出生直後からの体温下降・低血糖症・重症黄疸・体重減少に及ぼす影響について検討した。その結果、低出生体重児に行う体温管理(保温)と栄養管理(人工乳を用いた超早期混合栄養法)を正常成熟新生児に導入することで、発達障害の危険因子(低血糖症・重症黄疸・高Na血症性脱水)はほぼ完全に防止し得ることが分かった。当院のHPでは、久保田式の出生直後の体温管理法(生後2時間 保育器内に収容)と超早期混合栄養法(母乳の出が悪い時に人工乳を飲ませる)の実際について解説する。尚、久保田式の『発達障害の原因と予防策』については、自由民主党本部 障害児者問題調査会において、平成25年3月12日に講演した。






















★佐賀市の子ども育成に関わる職員向けの研修会(市保健福祉会館)2015年6月1日
久保田史郎  平成27年12月30日